12/04: ハミルトンうつ病評価尺度について

ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)は、1960年にMax Hamiltonが開発し、現在研究などで広く使われているうつ病評価尺度である。改良版としてGRID-HAMDなどというものもある。
なんせうつ病は血液検査や脳検査に引っかからない病気なので、こういった構造化面接でもしないと、何がうつ病なんだかわからなくなってしまう。

CBTセンターは医療機関でもないしそんなに研究もしないので、これまでHAM-Dで評価して来なかったんですが、ふと勉強する機会がありました。

しかし、これって、本当に大うつ病の中核症状をバランスよく測定しているんだろうか?と疑問が湧かなくもないので、感想を書いてみます。

まずは、HAM-Dはうつ病の重症度を構造化面接によって測定するとなっている。

評価項目は17項目版では
抑うつ気分、罪責感、自殺傾向、入眠障害、熟眠障害、早朝睡眠障害、仕事と活動、精神運動抑制、焦燥、精神的不安、身体的不安、消化器系身体症状、一般的な身体症状、生殖器症状、心気症、体重減少、病識

となっており、21項目版ではそれに加えて、
日内変動、離人症、被害関係念慮、強迫症状が評価対象になっている。

まず感じるのは、生活リズムの変動が重症度評価に影響を与え過ぎという事だ。
入眠障害、熟眠障害、早朝睡眠障害、日内変動と、実に4項目8点がココに集約されている。もし原発性不眠症でもあれば、即座に軽症うつ病と判断されるレベルだ。
多重共線性のチェックとかまともにできているんだろうか疑うレベルで、信頼性が低そう。

で、21項目版の強迫症状ってのも、意味が分からない。
要するにDSM準拠ではないって事なんだろうけど。
そもそもうつ病と強迫性障害はそれなりに違う病気だと思うんだけど、なぜここに強迫症状?とか思う。

まあ、おそらく因子負荷量的にダウトな項目だから17項目からはじかれたんだろうけど、それにしても強迫というのがちょっとセンスを疑う。

でも逆に、どうして精神科医は不眠が続く限り、うつが治ったと看做さないのかとか、どうしてうつと強迫が並列する時に、強迫を見逃すのかは、何となくわかった気がする。

一方で、この症状は入れとけよ、とか、もうちょっと詳しく・・・と思うものもある。
例えば、「仕事と活動」という項目は、いわゆる一つの中核症状である興味・関心の喪失(アンヘドニア)に加えて、業務遂行能力、活動性の低下、家族内外の対人関係の全てをぶち込んでいるが、ここはもう少ししっかり聞いといて欲しい。
興味・関心の喪失(アンヘドニア)で1項目、家族以外との会話がおっくうとかコミュニケーションなんかで1項目、業務遂行能力/集中困難/失敗・ミスで1項目、ぐらいで、計6点ぐらいあってもいい気がする。

あとは、被害関係念慮というのは、まあそれはそれでいいんだけど、もうちょっと幅広く、ささいな出来事から思考(認知)が悪い方向へと枝葉を茂らせていくぐらいの、思考の生い茂り感なんかを拾えると良い気がする。
でもまあ、その方向で罪責感とか、心気症とか、全部含まれちゃうから難しいのかもしれないけど。

いずれにせよ、こういった翻訳尺度は作った母国ではうつの中核症状なのかもしれないが、翻訳先の国におけるうつ病の表現型がまさしく合致しているのかについて、確かめられているわけではない。時代背景も考慮されない。
DSMが改定されるように、主要な症状尺度も何年か毎に見直されればいいのになあと思う。
投稿者: 西川公平
2013-12-04 12:24
カテゴリー: うつ・躁うつ病

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