こころの困り事で悩んでおられる方の中には、「医療機関には行きたくない」と考えておられる方がかなり沢山いらっしゃいます。
その中の多くの方は、「薬に頼りたくない」、「一度(数回)通ったが、何の効き目も無かった」とおっしゃっています。
そういった方々にカウンセリングはぴったりだと思いますが、いくつかの留意点があります。
除外診断が済んでいない時
こころの病に見える身体の病気はたくさんあります。甲状腺機能障害や、糖尿病、痴呆性疾患、てんかん、etc.さまざまです。
カウンセリングは基本的に「それらの身体疾患ではない」ということが前提として行われています。逆に言えば、痴呆性疾患でうつ状態の方にどれだけカウンセリングをしたとしても効果はありません。心疾患をお持ちの方をパニック障害と誤解してカウンセリングを行う事は、命にかかわることです。
ですから、少なくとも内科などで、「起こっている問題は身体疾患に由来すると考えるのは不適当である」という”除外診断”を行ってきてから来談していただくことが望ましいです。
こころの病(病態水準)が重い時
カウンセリングの限界を超える病の重さの時には、カウンセリングがかえって邪魔になる事があります。
例えば、摂食障害でほとんど食事ができない状態であるにもかかわらず、カウンセリングを受けている事で安心して適切に身体的な治療を受けられな場合や、うつ病で希死念慮が強く、緊急性のある場合などが挙げられます。
他にもありますが、カウンセラーが面接した上で、病の重さから判断して第一選択が医療機関であると考えた場合は、カウンセリングを受ける条件として、まず医療機関にかかり、その上でカウンセリングを受ける事に主治医の紹介状(許可)を持ってきていただくよう提案する事があります。
主治医の許可があり、医療機関とカウンセリングルームを併用される場合であれば、どのような状態の方であれカウンセリングをお引き受けします。
医療情報が伝わっていない時
医療機関のインフォームドコンセントに誤解がある場合です。
こころの問題で、ちょうど薬物療法が適当に思えても、医療機関や主治医によっては、患者さんに納得のいく説明なしに突然投薬を開始するので、当然不信感が生まれています。
このような場合には、初回カウンセリングにおいて問題が整理された後、どの困り事にはどんな治療がどのような作用機序でどの程度効くかについてお伝えする際に、薬物療法にも再度触れることによって、誤解が解けることもあります。
経済的な問題
現在のところ、カウンセリングには保険が効きませんから、経済的な余裕がある程度なければ受けることができません。
その点、医療機関による薬物療法では保険も効きますし、自立支援法やその他の優遇措置もあります。