2007/06/14: うつ病のキャラ

これも演習で使ってるまったく架空のうつ病のキャラクター

うつ病に関して言えば、ほとんどの方が自分でそうだと気がつかないまま。
ところがうつ病の治療に関して言えば、早期発見が早期治療につながると私は思っている。早く見つけられればられるほど、本人や本人の周りのダメージも少なく、治りも早いと思う。

ゆえに産業カウンセリングの講演・研修の重要なポイントとして、気がつかないまま進行するという説明をしなくてはならない。
そのため「徐々に酷くなっていくが全く気がつかないまま」のキャラクターを想像してみた。専門家に相談に来ない人というのが実際どうしているのかは、全くの想像でしかない。
誰もモデルにしているわけでは無いのですが、書いてて「こうじゃないかな」とか、「ここはこうしよう」とか、結構ノリノリだった。
やっぱりアンケートで「途中までは全く自分の事だと思った」等と書かれます。

ちなみにこれがぴたりと当てはまるからといって、うつ病の他にも色々な病気が考えられるので、きちんと医療機関に行って診断・治療をしてもらってください。
カウンセラーによる認知行動療法は、うつ病に適用させる事ができますが、うつ病とそれ以外の区別をつける事(除外診断)は不可能です。

****気付かずに進行するうつ病****

Cさんは大きな会社のシステム部門に勤続8年の中堅社員。若い頃はそれなりに自信もあり、仕事が面白かったが、最近は元気が無い。

新しく配属になった上司が元々営業畑出身という事もあり、コンピューターに疎く、なかなか相談に乗ってもらえない。
仕方が無いので社内でのプレゼン原稿や得意先への説明などを、上司の分も用意しなければならない。
そうやって努力していても「もっと素人にもわかるように説明しろ」と、基本的な用語ですら言われ、当たられてしまう。
だんだん上司や同僚とも口を利くのが苦痛になってきたので、機械室にこもりがちになったり、職場の人間にあれこれ言われないように家にもって帰って朝まで仕事をするようになってきた。

普通の業務に加え、外向きの仕事や社内でのIT講習の仕事なども増えてきたので、どんどん残業時間が多くなり、毎月80時間を越えた。
あまり動かないせいか、もともと調子の良くなかった腰がかなり痛み出し、普段動くのも億劫になった。また画面の見すぎか、目の奥がズキズキと痛む。
気分を晴らすために飲んでいた晩酌が増え、寝つきが悪いこともあって、ウイスキーなどアルコール度数の強い酒を飲むようになった。
それでも眠りが浅く、小さな物音でも途中で目覚めてしまい、夜中に何度も目を覚ます。
一度目が覚めると明日の仕事の事を思って気分が暗くなるせいか、ますます寝つきが悪い。
寝られてないからか、深酒をしているからか、勤務時間もぼんやりすることが増えて、些細なミスが多くなった。

上司にミスを指摘されると、内心「お前のせいで忙しくなったんだ」とイライラするし、その事を考えて頭の中がぐるぐる回る。
どうやったら上司に恥をかかせてやれるか、どうしたら仕事に穴を開けて上司の責任にしてやれるかを四六時中考えるようになった
いったん考えがめぐりだすと、悪い方悪い方に考えが向かい、なかなか切り替えられない。
やめていたはずのタバコも再開し、仕事に詰まるたびに喫煙室で何本も吹かす様になった。
どんどん仕事が面白くなくなってきて、仕事に行く気をなくしたからか、朝起きにくく、出勤するのが辛くなってきた。
1、2分ぐらいの遅刻が増え、また体調不良を訴えて昼から出勤することが増えた。

そんな折、妻から「最近娘がご飯をあまり食べなくなっていて心配だ。学校の友達と上手くいっていないみたいだから、少し気晴らしにどこか連れて行ってやって」と言われた。
こんなにも一生懸命、重い体を引きずって、死に物狂いで仕事をしているのに・・・・と、ものすごく腹が立ち「何を甘えた事を言っているんだ!そんなことぐらい母親であるお前が何とかしろ!」と怒鳴ってしまった。
妻は黙ってにらんでくると、しばらくして「すみません。相談したのが間違いでした」と言ったきり黙ってしまった。
それ以来、そもそも少なかった家族の会話がほとんど無くなった。

ついに重要なプレゼンの日、仕事に行くと出かけたまま、降りるはずの駅を行き過ぎてしまった。
上司から電話があったが、「元々私の仕事では無いと思ってますので」とだけ答え、そのまますぐに携帯電話を切り、電源も落とした。
やった!と興奮すると共に、もうダメだ、もう戻れないと感じた。
どこへ行こうかとぼんやりと考えたが、どこにも行くところが無いなあと思った。
気がつくと大学時代に住んでいたマンションに来ており、昔良くそうしたように、屋上に登って景色が見たいと思った
手すりにもたれかかって、「ああ、俺にはもう何も無いなあ・・・」と思って・・・

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投稿者: 西川公平
2007-06-14 10:17
カテゴリー: うつ・躁うつ病

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