何から取り組んでいくか

認知行動療法(CBT)を施術していく上で、何から取り組んでいくかについて書かれています。

マクロのアセスメントを行う

何から取り組んで行くかを決めるためには、まず取り組むべきどのような困り事があるか、本人を支えるどのようなリソースがあるかなどを調べていく必要があります。それらを出来るだけ広範囲に調べ、生活のどのような状況で、どのような認知や行動が、どれほど本人を困らせたり助けたりしているかについて調べていくことがアセスメントです。
アセスメントとはしばしば「知能/発達検査・心理テストを取ること」と誤解されがちですが、それらのテストは大まかな範囲に当たりをつけるためには重宝しますし、論文などを書くときには使いますが、対象者の生活にそれほどFitするものではなく、臨床上役に立つ事はありません。
なお心理テストは様々な困り事別の心理テストをご覧ください。

またアセスメントを行う事は被検者に対して何らかの影響を及ぼす事があります。例えば自分の症状についてモニタリングする事によって「ああ、自分の生活はこんなにも惨めだ」と考えて落ち込むこともあり得ます。

いずれにせよ、その人が抱えている困り事やリソースの全体像をざっと把握していくことが最初のアセスメントになります。
認知行動療法の特徴としては、より「現在の困り事」に対してこのようなアセスメントを行う事が多いです。

アセスメントを元に大体のプランを立てる

大まかに調べられた全体像を元に、来談された方と相談しながら、どのようなジャンルの困りごとに取り組んでいくのを優先すべきか決定します。
なるべくならAという困りごとをやっていくなら、αというやり方があり、Bという困り事にはβというやり方でやっていく、Cには・・・というように、困り事と一般的な対策についても伝えながら行っていくことが望ましいです。

なるべく最初のプランは「取り組み易い」、「生活の不便を大きく改善できる」、「本人の希望に沿っている」、「施術者が経験豊富で自信がある」、「短期で終わって結果が判りやすい」などの事から取捨選択してください。
本人がどうしても取り組みたいが、施術者から考えてとっても大きくて困難な事に取り組むつもりでいる時は、慎重なディスカッションを要すると思います。

ミクロのアセスメントや心理教育

決定された方向性を元に、その困りごとについてモニタリングを深めて、どのような場面で、どのような刺激の元、どのような思考が現れ、どのような行動をとり、どのような気分がして、どのような身体反応があるかなど、詳しくアセスメントをしていきます。
またそれと共に、その困りごとに一般的に使われている対策について、その原理なども含めて心理教育を行っていきます。

それらのアセスメントには、モニタリング用のコラムである、「不安階層表」、「日常生活記録表」など、シンプルに起こっている出来事や気分を把握するコラムが使用されます。
なおモニタリング用のコラムは認知行動療法の道具箱をご覧ください。