2009/10/18: 認知療法学会 行動療法学会 2日目 その2

第35回行動療法学会&第9回認知療法学会に参加してきました。
2日目の感想その2です。

幸か不幸かあらゆる用事が2日目に集中していました。

午前中のシンポジウムが終わって挨拶もそこそこに、次は行動療法士会の『専門行動療法士面接試験』に行ってきました

とはいえご飯を食べる暇とかスキマとかがあまり無い!困ったなと思っているとちょうどそこにランチョンセミナーがあったので、背に腹は変えられないとばかり、がっつり食べて途中退席しました。

この専門行動療法士の試験というのは、それなりにしっかりとしたというか、こってりとしたというか、すごい試験だった。
事前に12000字ばかりのケースレポートを作成・提出して、それについて説明したり、弁明したり、言い訳したり、あれこれしないといけない。

事前のケースレポートに関して、私なりの事情をもう少し付け加えると、そもそも専門行動療法士を取ろうと思ったのは「認知行動療法をやっている認定行動療法士の西川です」と自己紹介すると、たいてい周囲が混乱するからだ。せめて”認定”が”専門”という言葉に変われば無用の混乱を避けられる。

そんな事を思って、どのケースをレポートしようかなあとあれこれ思案していたところ、最もシンプルなケースが良いだろうという事になって、ケースを選択していたのだが、フタを開けてみたらそのケースは出せないという事になった。
ひー、マジで・・・と思って、あわてて別のケースを選定したのが実は締切2日前。なぜなら今年の試験の締切が通年より1カ月ばかり前倒しになっていたからだ。
9月30日から書き始めて、考察以外の実際のやり取りや介入部分が書き終わったのが同日夕方。書けた文字数は6000字。
・・・あと6000字って、どうやって埋めたらいいんだろう・・・

よくよく審査基準を見ると、ケースは1〜2例で良いと書いてある。しかし、今からもう1例書くのはいやだな。

そんなわけで、思い切った水増し作戦をとる事にした。水増しと言っても同じことを繰り返して書くというのはあまりにアホらしいので、普段なら考察しないような微妙で微細な機微のような所まで余すところなく書く事になった。

しかしそれは、思いのほか楽しい経験で、普段の私は『良くなれば良い』と言わんばかりに作用機序に対して無頓着なところがある分、あれこれと作用機序について考察する機会(文字数)を与えてもらったわけで、考察を書き始める前よりも後の方がずっとケースに対する理解が深まった。
その後ケースに電話して、一度報告の了解を取っているところ、再度どこでどのように報告するのかを伝えて了解を取ったところ、懐かしく話もできたし、考察で至った結論と大体同じ事を本人も話していたのでそれもそれで興味深かった。
カウンセリングが進行している最中はいささか職業的な反射・反応でクライアントさんに相対している部分が無きにしも非ずだが、よくよく考えてみるという事をするとそれなりに理にかなっているものだと感心した。

まあ、そんなケースレポートを下の図のような状況で話すわけですよ。

権上さん  S先生  S先生  K先生  H先生  O先生  K先生
 ○      ○    ○     ○    ○     ○    ○


                  ○
                  私

(「試験の公平性を保つために各認定委員の氏名はブラインドで」ということらしいので、イニシャルにしました。)

いやはや、なんというか入った途端、レキレキレキレキッと音が聞こえてくるような圧迫感を感じました。
まあでも、それなりに知った先生方ばかりだという安心感もあり、実際のところ温かい雰囲気で面接は進みました。決して怖くはなかったですよ。

面接の内容などはちょっと個人情報何で書けないですが、O先生が「これってメモ書き程度だよね」と発言されて、なんて鋭い!と感心した覚えがあります。
O先生とは初めて話して、その後の懇親会でも話しさせてもらって、とってもいい先生だなあと思いました。

しかし、行動分析の用語などには私の方の誤解も多く、臨床がどうこうというより「専門行動療法士として教える立場になるとしたら、そのような言葉の誤用をしてしまうのは学習が足りない」点を指摘され、反省する事が多かったです。

そのあたりの事を特にH先生に色々ご示唆頂いて、さらに「Unilateral Family Therapy」という家族への介入に際して理解を進める上で役に立ちそうな情報までもらった。最近育成に力を注いでいるとブログにも書かれていたけど、本当にそうだなあと思う。

K先生は「我々を面白がらせようと、わざと変わった症例を持ってきてる」とか言ってたけど、本当に私の中では極シンプルなケースを出したつもりなんだけどなあ・・・

しかし、全体的には前向きな示唆が多くて、とってもためになりました。ていうか、そんな5人の面接官って、なんてゴージャスな試験だと思った。
どっちかと言えば毎年の中級研修会よりもこっちのほうが楽しいかなという感じなので、今年落ちてたとしても来年捲土重来で臨みたい。

とまあ、若干詳しい目に専門行動療法士面接試験の事を書いてみました。専門行動療法士面接試験って、何かどこにも情報が載っていないし、受けようかなと思ってる人のためにもちょこっとした情報開示です。

ちなみに上の話からも判るように、臨床心理士や認定行動療法士と違って、リアルに行動療法が使用できて、かつ説明できる人でないと決して受からないような仕組みだと思います。

今年の中級研修会は岡嶋先生の発表で行きたかったけど、あいにく発表が重なって行けずじまいで残念でした。
後で出席した中京の首藤さんに「どうだったの?」って聞いたら、催眠による治療のあらましを教えてくれたので、「それって非治療的な内容で治療者のタクトに従うという練習をした後で、治療的なタクトを入れてるだけじゃないの?」って尋ねたら、「谷先生がほとんど同じこと言ってましたよ」と首藤さんに言いかえされた。ぎゃふん。

まあ、そんなこんなで2日目その2は終わります。その3に続きます
このエントリーをはてなブックマークに追加
投稿者: 西川公平
2009-10-18 15:56

Comments

コメントはまだありません。

Add Comment

TrackBack

トラックバック

トラックバッックはありません。