2009/10/15: 認知療法学会 行動療法学会 2日目 その1

第35回行動療法学会&第9回認知療法学会に参加してきました。
2日目の感想その1です。

2日目が0時から始まるのであれば、0時から3時まではスライドを修正していた。
実は地方勉強会のシンポジウムの流れが定まっていなかったからだ。

当初の予定では「事務局レベルの人々で雑用のグチり合いをする」ような話になるんじゃないかと思って、各地の勉強会に交渉してみたんだけど、フタを開けてみたら中京大学の坂井誠先生、原田メンタルクリニックの原田誠一先生、と超重量級の顔ぶれになったことで、嬉しい誤算というか悲鳴というか、より一層「地方で勉強会を開催するという事」について意義を述べたりする事が深みを増しそうな気配を感じたので、ずっとあーでもない、こーでもないと進行や戦略を再構築し続けていた。
前日の晩に方向転換するなよ・・・と言いたいところだけど、幸い司会の大月友先生は、tomという変な名前が示す通り「世界のテキトウさに照準を合わせて動く」事に関してはそれなりにそれなりな先生なので、そこの所は大丈夫だろうと高をくくった。

この地方の勉強会に関する発表は昨年もやったんだけど、その時はどうしても手前味噌さがぬぐいされなかったので、[企画者兼指定討論者]という、すごく奇妙な立ち位置で関わることとなった。
そのわりに演者の先生方にはどのような発表・討論の流れになるかが事前に伝わっていない不安定さの中でお話しして頂くような次第になってしまい、大変申し訳なかったと思う。

そんなわけでパネルディスカッションなどが大幅に変更されてから、5時間ほど目を閉じて、次に目を開いた時にはもうすでにそこはシンポジウムの会場となっていたので、シンポジストの先生方に簡単にその旨を伝えたスタートした。

まず発表の意図としては、まあこれはある種の学会批判でもあるんだけれど、「普及=国家資格&保険点数&認知療法学会と行動療法学会の統合」みたいに書かれると、とっても違和感がある。ブルーレイディスクは普及しつつあるけど、べつに国家資格も学会統合もしてないじゃないかと言いたい。
普及というのは、いろいろな段階があって、それこそ認知行動療法を知らないやってない人にその良さを伝えるレベルから、学会発表したり病院にシステムを作ったりのレベルまで、かなり温度差がある。そしてそれぞれの普及には結構異なる戦略が必要だ。
学会は大学の頭で普及を考えるので、大学そのものが地域に根ざすという発想が乏しい中、大学のCBTを地域に普及させるという発想も乏しいんじゃないかなあと思う。

まあ端的に言えば普及というのも行動なわけで、CBT好きな各個人に普及のプロセスに際してもう少し参与可能な行動を示唆して、普及行動のパフォーマンスマネジメントを行うと良いんじゃないかと思う。

ちなみにこれは私が思っている事であって、各パネリストの先生方がそのように学会を批判して思っているということではないです。
ただ、地域で勉強会をするというのは、やはり地域での普及を考えておられる先生方なので、それこそまさに自分でできるCBT普及を地で行っている人達だと思う。

最初の坂井先生はBTBMWという久野先生から引き継いだ遺産的な勉強会についてご自身の悩みや迷いを率直に話された。BTBMWは老舗の大きな勉強会だけに、それをより良くするにもどうにもこうにも歴史の反動のようなものがあるのかもしれない。しかし現在はコンパクトな勉強会とBTBMWの二つを機能分化していく試みによって、それなりに新たな動きが見えてくるような希望的な発表だった。

次の田中先生は徳島の認知療法を学ぶ会という井上先生の勉強会についてその苦労を述べられた。ここもまた古くからある勉強会なので、主催者と参加者のニーズのズレ?があるのか、とにかく発表者の確保に苦慮しているという話だった。井上一臣先生にタダでケースを見てもらえるというのは、他の地域からすれば考えられないほどの幸運だと思うのだが、逆に言えばそのような偉い先生がいない地域、いる地域という事とは無関係に勉強会の運営・維持は苦労するのだろうと思う。
例えば滋賀の勉強会はだいたい滋賀県外の人が主要なメンバーであるという奇妙に逆説的な構造になっているが、それも少し同じような事なのかもしれない。

三人目は原田誠一先生がご自身のクリニックで開催されている勉強会について話しされた。原田先生の勉強会で最も多くケースを出しているのは西川さんだと聞かされて、自身の厚かましさに少し赤面した。原田先生自身の勉強会への参加の歴史や開催の歴史を述べられつつも、勉強会の開催はそんなに気負わず楽にする事とおっしゃっていた。認知行動療法にこだわる事すらそんなにないという懐の深さを見せられた。
原田先生自身は決しておっしゃらないだろうが、「勉強会がためになる」という感覚、もっと勉強したいという気に自然となるような勉強会である事が、大きなポイントだと思う。しかしそれは原田先生の戦略などではないだろうから、そのためになる感について話しできないのは残念であった。

四人目は嶺南病院の岡本先生で、四人目は若干身内話だという批判も出るかもしれないが、最も勉強会未開催地の興味をそそったかもしれない。なぜなら福井には、人もおらず、講師もおらず、勉強会も無いのだが、ただCBTが学びたい、そしてそれを地域に還元していきたいという事だけで立ち上げているからだ。
私としては単独の病院のモノ化していかない工夫として地域・職種ごとに世話人を作ったり、決して病院では開催しないなどがもうちょっと語られても良かったかなと思ったが、あんまり手前味噌すぎるかと思って控えた。

指定討論では”普及”とは何かという視点から、勉強会構成員へのさらなる普及についてなど話してもらった。今思えば勉強会と地域のインタラクションなんかについても話を膨らませられれば良かったと反省している。

指定討論の内容を少し書くと、まあいくつかの勉強会では「発表者がいない」という困りごとが出たけど、それも「普及」という同軸にとらえていくことができる点や、普及と熟達の両立が中々難しいという点などを指摘した。

パネルディスカッションはそれなりに盛り上がった。少し反精神医学風の質問があって色めきたった部分があったが、そこは坂井先生と原田先生がしっかりコメントされてて、さすがだ(大物に来てもらってて良かった)と思った。

シンポジウムが終わってから、北海道の太田先生と話していて、「去年の地方勉強会の発表を聞いて北海道でも勉強会を立ち上げた」という嬉しい報告を聞いて想定外だっただけに嬉しかった。
是非来年は、より一層立ち上げていきやすくなるように、太田先生とか、広大の松永先生とか、よりフレッシュな感じの勉強会に話してもらうことで、今後とも続けていきたい。
もちろんその前に、それぞれ一回ぐらい見学に行かないとなんだけど・・・

たくさん書いたので、ひとまずここまでにしておきます。
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投稿者: 西川公平
2009-10-15 00:31

Comments

こぼり on 2009/10/16 2009-10-16 00:20

学会では1年ぶりに(まったり休憩所で)再会できてうれしかったです。このシンポジウムには参加できませんでしたが、あとで原田先生などからそのときのようすを聞きました。とても熱いシンポジウムだったようですね。

ところで、時差ボケ→通訳の緊張→疲労が見事にはまり、学会中は僕も毎晩3時間睡眠でしたよ!サルコフスキスを香港に見送ったら、急に眠れるようになりました…

慶応の方々がどんなパッキパキのワークショップをしているのか、見てみたかったです。

太田 on 2009/10/16 2009-10-16 10:02

今年も西川先生のケーススタディ+シンポジウムにて非常に良い刺激を貰いました.
ありがとうございます.そして,お疲れ様です.

昨年度の学会以降,札幌での地方勉強会を立ち上げるという目標を掲げつつ,
戦略を立てながら動きをしていました.
シンポジウムを聞かせていただき,自身の動きのズレを明確にできました.
ブログに名前を挙げてもらえたことがお恥ずかしいほどです・・・

4つの勉強会の詳細なあり方を聞けたことで,戦略の方向性がはっきりすっきりとしました.
自身の戦略の方向を大幅に変更し,形式をしっかりした札幌CBTを学ぶ会としてスタートするべく熱い思いでおります.

gestaltgeseltz on 2009/10/18 2009-10-18 23:31

>こぼりさん
学会では色々お話しできて良かったです。仁藤さん達と「なぜ私たちは学会発表するか」という話をしたのは楽しかったですね。
ちなみに女装の件はついうっかりだそうです。

>太田さん
こちらもシンポジウムを企画させてもらっている上で励みになります。聴衆の心が動かないシンポジウムは意味が無いですから、実際にそうやって頑張って頂けると嬉しいです。
というわけで、来年はシンポジウムよろしくお願いします。

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