2012/10/08: NHKハートフォーラム「うつ病と躁うつ病を知る--ワークショップ--」(東京) でおしゃべりしてきました 〜その2

そして、出番の第三部。

第三部は、対人関係療法の治療者とクライアント、認知行動療法の治療者とクライアント、就業サポート、ピアカウンセリング?となっていました。




第一演者の生野先生は対人関係療法のお立場から、患者さんとのやり取りをライブで行われた。印象に残っている患者さんへの話の振り方として、患者さんの日常生活においてストレッサーがあった時に、
Th「そのことは、あなたの重要な他者であるご家族はご存知ですか?」
Pt「はい、知ってます」
Th「なんておっしゃてましたか?」
Pt「******と言ってました」
Th「それを聞いて、あなたの気持ちはどうなりましたか?」
Pt「やっぱり全部わかってもらえたわけではないけれど、ある程度知ってもらえてホッとしました」
みたいなやり取りがあった事だ。
ここは、認知行動療法ではそれほど焦点づけられていない感じのストロークだなあと感心した。
また、対人関係療法ではある程度「正しい認知、正しい関係性(距離)」のようなものが決まっていて、そこには当てはめていくようしっかり指導を入れていくという感じだったのも印象深かった。

生野先生その人は、私の知っている他の対人関係療法の先生に比べてかなり柔軟で、んー、あれ?こーゆー感じは慈恵って言うか、森田?みたいな、実際のところ慈恵でも森田でもないみたいですが、ブッティストかと思わせる感じでした・・・。
また、対人関係療法と、生活リズム療法は全く別物で、二本同時に走らせてるようなもんだという言葉もなるほどと思いました。

さて、私の番ですが、私はもともと受け持ちの患者さんではなく、その前の週に急遽「撮影用にお試し認知行動療法をしてください」との依頼で取ったセッションを編集したものがVTRで流された。
さすがNHKだ、上手に編集するわ・・・。

実はいっぱい言いたい事があったんだけれども、時間の制約上言えない事があって、まあそんなことをここで書きたいなと思います。
しかし、ここだけは言いたいという事もあって、それは
「認知行動療法において認知が正しい、間違ったというのは、あくまで患者さん自身が判断する事であって、治療者がどうこう言う事ではない」
という事です。

言えなかったこととしては
「双極性障害への認知行動療法のメインは躁転時のダメージを抑えるべく、いかに早く、細かく躁転サインを発見できるか、個々人にカスタマイズされたリストを作成することおよび、適切なコーピングを身に付けて、上げ止め下げ止めすること」です。
これは、面接の中で十分焦点を当てて取り組み、患者さんも課題として取り組んできたんだけれど、VTRの中では全カットされていました。
逆にVTRの中で焦点づけられていたのは「考え方を変える」という部分でした。

もう一つ言えなかったことは
「双極性障害の患者さんはスキルではなくテンションで人生を切り抜けてきたようなヒストリーがあり、ある種いつ来るかわからない躁転を心待ちにして生きていると言える」
逆に、「計画を立てて実行して、実験してみよう」みたいな時は躁転時の発想であり、何度もそのような事態から痛い目を見ているので、自分で自分の人生に積極的に働きかけるうえで躊躇している」とも言えます。
つまり、双極の患者さんは、単極(うつ病)の患者さんに比べてやはり二重に障害されているというか、自分の前向きさも信じられなくなっているというアンビバレントな状態にいることが多い。
という事でした。

まあ、なかなか20分ではあれもこれも言えるわけではないので、致し方ないですね。

さて、次は就業支援の立場から千葉県のひだクリニックの石井和子先生という精神保健福祉士の先生が患者さんを支えるVTRが流れた。
おっと、石井先生、受ける所を受けて、締める所を締めてる。やり手だわ、これは。
いやー、いろんな地域に実力者っているもんですね。
町の八百屋さんとしては、町の素敵な家具屋さんに共感した感じでほっこりした。
いやまあ、向こうはちゃんとした組織なので、不遜な感想ですが。

というより、やり取りはまるで認知行動療法なので、後でこそっと聞いたら、デイナイトケアなどでいつも認知行動療法してるそうです。さすがにこなれていたと思った。
ていうか、ここの話もーちょっとたくさんあってもいいんじゃないかな?
むしろ倍ぐらいあってもたくさんいい話が出てきそう。

第三部の締めはWRAPというアメリカの自助団体?がやっているワークで「元気回復プラン」と日本語に訳されているらしい。
おそらく内容は、「病気のレベルに応じてコーピングを活性化しよう」ぐらいのものにポジティブサイコロジーがくっついた感じ。
昔々CAP(子どもへの暴力防止プログラム)というものに触れたことがあったけど、何というか、そんな感じです。
どちらかと言えば事前にぼそぼそと生野先生とワークについてしゃべっていたのが面白かった。

そして、総締め、加藤先生、鈴木先生、生野先生、とそれぞれがいろいろ話し、もう私話すことないじゃん的なポジション。
たぶん精神療法も万能でないよって話と、今日の話はリアルだったからしんどかったかもしれんけど、その向こう側にはいい未来があるかもしれんよって話をしたような気がする。

そんなこんなで終わりました。
有名な先生方とお知り合いになれたミーハーな気持ちと、患者さんたちの良くなりたい熱意を感じたワークショップでした。
このエントリーをはてなブックマークに追加
投稿者: 西川公平
2012-10-08 04:41

Comments

猛禽類 on 2013/04/24 2013-04-24 00:31

>さて、次は就業支援の立場から千葉県のひだクリニックの石井和子先生という精神保健福>祉士の先生が患者さんを支えるVTRが流れた。
>おっと、石井先生、受ける所を受けて、締める所を締めてる。やり手だわ、これは。
> いやー、いろんな地域に実力者っているもんですね。

この精神保健福祉士は、双極性障害のその字も知らないですよ。思うように患者が動けなかったら、スタッフと精神障害者しかいない半地下室をいいことに、罵声を浴びせる有名な精神保健福祉士です。この辺近辺の、家族会の親御さん達の間ではそういうことで有名な、精神保健福祉士です。ウソだと思うなら、辞めて行った患者のご家族にお聞きください。

猛禽類 on 2013/04/24 2013-04-24 13:15

追加ですけど、このやり手だと思われている精神保健福祉士は精神障害者の前で「私には、日本で一番大きな飯田橋のハローワークがバックに付いてるんだよ!言うこと聞けば就職できるんだよ!」とかね、尋常じゃないこと言いますよ。もちろん、飯田橋のハローワークと関係があることは、実際に担当官が何人も来たので、ウソでは無いでしょうが、本当かどうか直接、飯田橋のハローワークに問い合わせたら、「ひだクリニックの患者さんだから特別扱いすることはできない立場です。だから、関係はありません。」と、言っていましたが、じゃあ、どっちが嘘ついてるのよwこの精神保健福祉士が嘘言ってるの?半分公務員の様なハローワークの担当の方が嘘ついてるの?こういう官民癒着の様な構造は、障害者の就職の平等性に関わってくる問題なので、止めて欲しいです。

Add Comment

TrackBack

トラックバック

トラックバッックはありません。