2014/08/25: 日本心理臨床学会2014秋季大会 参加記

かねてから一度は行ってみたかった日本心理臨床学会2014秋季大会に参加してきました。認知行動療法とブリーフセラピーの接点という本の販売促進を兼ねて?シンポジウムに呼ばれたためです。

その時の感想を書いてみます。

パシフィコ横浜というのは、割とよくある学会場で、前も来たことあるなーと思いつつ、会場に入って思い出したのですが、WPAが日本で開催された時に、「統合失調症と非統合失調症におけるSSTの効果の違い」みたいな発表をしたんでした。記念すべき初の学会発表だったので、その当時を思い出して懐かしかったです。

かねてから一度は行ってみたかった理由は、どちらかと言えばネガティブな噂が多い学会で、ある種のお化け屋敷体験というか、そーゆー楽しみがありました。
小耳に挟んだ噂では
・全然治療になってないのに、治らない言い訳だらけ。
・演者が壇上で自分を責めて泣き出す。それを聞いて聴衆がもらい泣き。
・認知行動療法の悪口をいっぱい言われる。
・ほとんどの発表に治療が何がしかの影響を与えたというデータ(根拠)が無い。
・だいたいが妄想発表会
みたいな感じでした。
まあでも、行ったこと無い学会で、そんな印象もアレだなと思うので、実際参加してみてどうなんだろうと、潜入体験レポみたいな感じで行ってきました。

一日目午前の発表は、ほとんどシンポジウムでした。私は開業心理士の現実(リアル)とかいうシンポに参加しました。
んー・・・・・、現実(リアル)って言葉は人によって全く違うんだなあという感じというか、発表者は全員精神分析の人たちで、精神分析の人たちが現実と思っていることは、我々認知行動療法家にとって単なる妄想なんだという深くて暗い溝を感じました。
とりあえず「どうして現実的な話を回避するの?」と質問してみたら、ゴニョゴニョごまかされた感じでした。残念。
でも、この発表で、「思ったことを好き勝手、なんの根拠もなしにだらだら述べても良い学会なのだ」という印象を得て、次のコマの自分の発表に勇気をもらえたことは確かです。

一日目午後の発表は、我々CBT&ブリーフセラピーチームの発表です。ちょうど裏でも行動療法・行動活性化のシンポが行われていたんですが、どうやら会場は裏の通路でつながっており、10mぐらい先の扉を開けると行き来できるようだったので、始まる前にお互いのシンポジスト皆でキャッキャと楽しんで行き来していました。
私はトップバッターで認知行動療法について基本的なことをしゃべれと言われていたので、まあ、基本的なことは本を読むか、後の高橋先生の発表を聞いていただくことにして、認知行動療法というオリエンテーションの持つ方向性についてふんわりと話して、ちょっと小ネタで笑いもとって、終わりにしました。
ちなみに、先のブログに書いたデータも活用したので、数えた甲斐がありましたし、そこが一番インパクトあった様子です。
CBTのシンポジストはジャスト15分で終わったのですが、ブリーフセラピーの人々は、結構15分を守らないので、むむむ・・・ブリーフなのに、ブリーフに終わらない・・・と思いつつ、まあ、いいかと思いながら聞いていました。その辺にも療法の違いが出ているのかもしれません。
恐るべきことに、次のシンポに出ようと思っていたら、懇親会に誘われました。15:30なのに?!と思ったら、美味しい中華の店の予約の都合などで、すぐに出発して並ぶ必要があるらしいのです。そんなわけで16:00には店の前に着き、16:15には乾杯して、20:00までグダグダ飲み食い、話し・・・と和気藹々としていました。

二日目午前は、産業カウンセリングのシンポジウムに出ました。これが精神分析の発表だったのですが手酷い感じで、診断もでたらめなら、投薬もいい加減で、ぐだぐだ数年休職させるに任しておきながら、週一回面接してなんの効果も出ず、結局ほとんど自然治癒して終わった、みたいなお話でした。
それをまた指定討論者が精神分析系で「父性についてのアセスメントがフィットしていた」みたいな見当違いのことを述べて、あたかも上手くいっているかのように述べていたので、いい加減にしろということで「治療になってねーよ」とコメントしましたが、まあ全然通じていなかったですね。
こーゆーのが臨床心理士のクオリティーだなあと、魅せつけられる思いでした。しかし、臨床心理士に罹ったことで、休職を数年にも引き伸ばされたクライアントさんって、可哀想ですね。

二日目午後は、たまたま入った発表がこれまたCBTとブリーフセラピーの発表で、事例報告を聞きました。
CBTの人は福祉関係の人で認知行動療法の学会では聞いたことない人だけど、良いセンスでやっておられて、ずいぶんマトモな感じでした。
「別にCBT習ったわけでも、やろうとしてたわけでもないけど、何とかクライアントの役に立とうと悪戦苦闘してて、気がついたらCBTになっていた」と言っておられたのが良かったです。
なんせ一つはマトモな発表を聞けて良かったというか。今度認知療法か、認知・行動療法の学会に来てねと勧誘しておきました。
ブリーフの方は、まあ最近のブリーフの事例発表は皆そうだけど、ブリーフセラピーすることにこだわりすぎてて、面白味に欠けてる気も無きにしも非ずです。
ブリーフなのにかくあらねばならぬ/かくあってはならぬみたいなのって、既にブリーフセラピーの「何でもあり」だったところから逸脱しているというか。
おそらく「ブリーフセラピーとは**なのだ」と説明してしまった所で、説明すればするほど残念になるという矛盾をはらんだセラピー、それがブリーフという気がします。それゆえに故ミルトン・エリクソンは説明しなかったんだろうな・・・、なんてことを考えていました。

その他ロビーではちょっとした知り合いと話したり、久々に出会ったり、挨拶したり、されたり、と全然知り合いがいない感じではなかったですね。
でも、妄想いっぱいの発表はあったけど、噂で聞いたような泣き出しちゃう人とかはいなかったですねえ。やはり偏見というものはイカン。
それにしても、何度も参加している人たちから、こっちが何も言っていないのに
「この学会は昔はもっともっと酷かったんだよ。これでもずいぶんマシになったんだ」
と聞かされたのが印象に残っています。

結果として結構ランダムにはいったつもりの発表で、精神分析とCBT&ブリーフばかりにあたってしまいましたが、まあでも普段の学会では会わない人に会えた、聞けない話が聞けたという感じではあります。
一番多いと思っていた来談者中心療法の発表とかには全然ぶつからなかったですね。結局、精神分析とかCBTとかブリーフとかはアクが強くて押し付けがましい輩なので、主張するのが得意な人たちのかもしれない。


じゃあ、結局その「普段聞けない話」を聞きたいのかと言われると、んー・・・・・、まあ学ぶべき事はそんなにない学会なのではないかと想像します。ただ、来る人は多いので、割りきって広報などをするにはいいのかもしれないですね。

しかし振り返って認知療法学会や認知行動療法学会に学ぶところがあるのかと言われると、それまたビミョウというか、まあ、どんぐりの背比べみたいなものかもしれないですね。
よくよく考えると学会って何で行ってるんだろうということがわからなくなってきたので、今年はもうエントリーしている分仕方ないですが、来年以降は呼ばれない限り学会に参加しないことにしようと思います。
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投稿者: 西川公平
2014-08-25 18:35

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