2012/11/26: 第12回日本認知療法学会参加記 西川

11/23,24,25と東京ビッグサイトで行われた第12回日本認知療法学会、第13回認知療法研修会に参加してきました。
スタッフの発表があったり、同僚のシンポがあったり、私の発表があったりと、やはりホームの学会は忙しかったです。

2日目の井上和臣さんを囲む会で、井上さん自らが「皆呼び合うのを〜先生づけはやめて、さん付けにしましょう。私の事は今後井上さんと呼んでください」と、とても困難な事をおっしゃられたので、試しにこのブログでは全ての方をさん付けで呼んでみます。
早くも多大な違和感。
不潔恐怖の曝露と言うより、確認強迫の反応妨害的気持ち悪さだと思う。でもがんばります。

前日はスタッフの別司さん、三田村さんが発表スライドを送ってくれたこともあり、広報委員会の資料作りもあり、忘れていたWEBアップロードもあり、とにかくバタバタとホテルに缶詰めで作業していました。
そんなわけで一日目のしょっぱなはスタッフの別司さんが発表。ひどい風邪をひいていて、大変そうでしたが、思いのほかいい感じにまとまって居たのではないかと思います。
特定の宗教的主義主張に走らず、認知療法や行動療法をバランスよく使っている感じが、なんだか逆に懐かしい感じでした。2日目の飲み会で東斉彰さんと「認知療法学会なのに、普通の認知療法の発表が少ないよね」みたいに話していたことは本当に確かで、なんかもっと認知療法マニアックみたいな発表があってもいいのになあと思います。
その後すぐ抜けて、ボストンから来たホフマンさんの基調講演に入る。「CBTにSSRIなんて併用する意味ないんだ。むしろ治療成績悪くなる。D-cycloserine一押し」みたいなお話し。毎年思うんだけど、高い金出して外国の方を呼んで、大して目新しくもない話を聞くのって誰がありがたがっているんだろうと思いつつ、またまた抜けて広報委員会へ参加。

下っ端なので雑用が降り注ぎつつ、決め事はペンディングという認知療法クオリティーが遺憾なく発揮される。
お昼ご飯を最近仲良い岩佐さんとかと食べつつ、しばし産業カウンセリングにおけるアウトカムについて談笑。
昼からはセルフモニタリングに行こうか、双極性障害に行こうか迷ったけど、伊藤さんの自主シンポに決めて、拝聴する。
うーーん、なんというか、「世の中には困難ケースが数多くあれど、発表ケースを“困難”としてしまうと、本当に困難なケースやそれを受け持っている人々に対して失礼な感じ」がしたので、率直にそう述べる。
「大人になると本当に言いたい事は率直に言えなくなるので、まだ子供のままでいたい感じ」とも言える。まあでも、多少毛が生えてなくもないので、終わった後で発表者の方々と会話する。
・・・何と、その流れか本日はこのシンポの打ち上げに混ぜてもらっての飲み会に誘われた。やったー。

フロアで、廊下で、あれこれ他の人から私のコメントに対するコメントを受ける。
そう思うなら、陰口叩かんとご自身で言わはったらええのになあという気しかしない。

その後ポスターをチラ見したり、書籍を見たりして、自主シンポFormulate Driven CBTの活用に参加する。うーん、普通。
まあでも普通に良きセラピストなので、Formulate Driven CBTのほうがいい感じに人を育てるのかもしれないと思った。例えばCBGTから臨床はじめてる人たちの育ち方って、ちょっとキモいし。
指定討論の石垣さんの精神病理学風お話や、鮫島さんの骨なしクラゲの話にウケる。

そんなこんなで1日目終了。懇親会では久保田さんの手品。また来年もやって欲しい。あまり寝ていないので、あまり飲まずに過ごす。
そして伊藤さんたちと二次会に。
伊藤さんのオフィスでは、本当に全員がさん付けでしゃべっていた。なんと。

神村さんと鈴木さんもおっつけやってきて、いつもながらの楽しい感じになる。CBTにおける良くなるってなんだろうねという話から、理事リエンスとペンディングの話、認知療法学会と行動療法学会の合併に関するエトセトラについて、グダグダ喋る。
いつしか「認知療法にも行動療法コロキウムに類する事例検討合宿が欲しいよね」という話になり、学会でというより、CBTセンターと洗足ストレスコーピング・サポートオフィス合同みたいな感じに好き寄りででやりましょうという話になり、じゃあ、西川君滋賀でやってと言う話になる。オカシイ。
まあでも、現状認知療法学会を通すとめんどくさい&何のうまみもないのは確かだし、そういう好き寄り実践検討会をするのは楽しいかもしれない。千葉の人たちとか誘ってみたり。

そういえば、千葉のCBTの人たちは1年前もやっとしていたのが、今年は形になっていて、伸び行く感じを予感させた。
やはり臨床をしゃべり合う環境が人を育てるのだと思う。

で、ホテルに帰って、自分のスライドを作る。うーん、スーパーバイズの言説をまとめるのって難しい・・・。

翌日スタッフの三田村さんが発表という事で、聞きに行く。つもりが、それなりに寝過ごした。まあでも、いい感じにそつなくまとまっていたと思う。きっと三田村さんのパッションも伝わった事だろう。
同僚の田中さんがスーバービジョンの自主シンポをするという事で、自分の発表もスーパービジョンだし、聴きに行く。聞きつつ、自分の発表資料を手直ししたり、スライドを付け加えたり、あれこれ思い悩む。
原井さんの脳内は金の話と西川の話を随伴させる事に決めている予感。
うーん、結局スーパービジョンの概要について述べてるけど、中身が良く判らないなあと思って「苦労話を聞かせてください」と振ってみるも、もひとつ中身が出てこない感じ。
企画&司会の田中さんがキレてると思ったら、スーパーバイザーのコンビニエンス性を高めろとのご意見だったのか。
ハッキリ言って、スーパーバイズは社会奉仕であって、「その火を飛び越えて来い」と言いたい感じだ。

岩佐さんと土屋さんと昼食。お二人に産業カウンセリングの研修ネタなどを披露してみる。土屋さんは相変わらずつつかれまくる。

いよいよ発表という事で、不安や緊張がいや増しに増す。さっきのシンポであれこれ付け加えたし、時間たりるかなあと焦りつつ、スーパーヴィジョンの口演に移動。
スーパーバイズは厚労省事業が花盛りな感じで、自らの発表の浮いた感じがたまらない。ふと昔東さんが学会発表してた「共感について」を思い出した。あーゆー浮き感ってたまらない。
しかし、なんというか、SVの中身の分からない発表というか、生き生きしないもんだなあ・・・。

てな感じで、私の発表。そこそこの早口でおしゃべり。
「状況に埋め込まれた学習」というレヴンの正統的周辺参加について紹介し、CBTに関する四方山話を増やしましょうよと、発表データに関係が無い話をしたいだけする。早口過ぎて時間が余ったので、スーパーバイザーとして気を付けていることみたいな、さらに発表データと関係が無い話をしたいだけする。
まあ、要するに言いたかったのは、「徒弟制度における技術の伝達」において、カウンセリングやスーパーバイズのクローズドであるというデメリットを乗り越えて、おしゃべりしましょうよという事です。
厚労省のSV事業というのも、あんまり話す機会の無かった臨床やCBTに関して、おしゃべりするチャンスが与えられたという意味において大きい。でも大事なのはおしゃべりであって、NASAが開発した何かではないし、それに飛びつくリテラシーはどうかと思う。

無事に五体満足で発表を終えて、別のSV発表を聞いてみると、これは中々に生き生きした感じ。当たり前だけど、面接が色々なように、SVも色々なんだなあと感じる。

その後はケーススタディーで栗原さんの発表を聞く。困難ケースに上手に目鼻をつけ、手際よく進めておられると感心。
質問したかったが司会の不手際で時間が無くなって、残念。
後程フロアで、「介入1と介入2における言葉の機能の差異」について質問する。
結局の所**療法というのは臨床を説明するためのただの言葉に過ぎないから、どうとでもなる言葉に囚われない方がいいよ、てな感じで先輩風を吹かしてみる。

一般身体医療におけるCBTというシンポで、巣黒さんの話を聞く。なかなかに盛りだくさんで、実地に基づく工夫がなされており、患者さんへの介入アウトカム以前に、むしろその“場になじむ工夫の色々”がCBTそのものだよと思う。
あとは、熊野さんという癌・緩和ケアへのCBTの話が実のある物だった。臨床実践において、自分の仕事の範疇をどこからどこまでまでに線引きするかについて、責任ある態度を感じた。
ただ、残念なことに「一般診療科に普及を目指すために」という目的に向かって進むには、組織や経営者へのPRポイントが必要で、それは無い感じのシンポジウムだった。ペイする/しないについて無関係の発表者が多いからだろうか、どこか浮世離れした話だと思って、隣の岡本さんとぐちぐち言ってた。

学会の全てが終わり、和歌山の小山さんと私のSVの発表についてコメントを頂く。素で話せば見えるはずの目の前の人の状態が、**療法にかかりきりになって囚われることで見えなくなり、それは療法やプログラムが持つ害悪の一種だと私見を述べる。
和歌山で行動療法の研修をしてくれと依頼を受け、それも楽しそうだと思う。

そんなわけで井上さんを囲む会に参加。
禅宗の坊主とかキリスト教の神父とか哲学者とか他所の職種の人を呼んで、ワイワイと対人援助について異論をぶつけ合う事で楽しい世界が展開するんじゃないか、などと妄想を繰り広げて遊ぶ。

夜更かし生活がたたって、ホテルに帰っても目がさえて寝られないので、大会参加記ブログを書く。
書き続ければ、さんづけも飽和するという事を思った。さすが。
でも多分、絶対面と向かっては無理。

そんな感じの学会生活でした。

翌日は研修会。
午前中SADのビデオフィードバック、午後からはLarsonさんの行動医学のワークショップを受けました。

SADのビデオフィードバックは、まあ特に目新しい知識は無かったけれど、丁寧にプログラムが組まれていて、患者さんは安心な感じ。内容もワークショップというだけあって、色々なワークが取り入れられていて、判りやすかった。
そんなに重症例はしていない雰囲気だったけど、それはそれで初心者向きにというか、認知行動療法というものは何かをクリアに表す意味において良いものだと思う。

午後からのLarsonさんの講義は、アメリカの行動医学の分厚さを感じさせる内容で、なかなかのボリュームだった。胃腸・内臓の神経系が中枢神経系から独立して機能する話や独自の記憶能力を持っている話など、あまり心理としては聴かない知識が多く、面白かった。技法としてはバイオフィードバックから催眠まで幅広く身体を扱う技法が紹介され、生態学的で歴史的で文化的な背景を考慮した上での治療スタンスを述べられた。
事例紹介では催眠を使用したケースが紹介され、なるほどこれが催眠認知行動療法かとそれもまた面白かった。事例の進め方や扱う内容については微妙に疑問もあったので質問したところ、丁寧にお答えいただいた。「その点を扱うには時間が足りなかったの」的な答えで、20か月は結構な時間だけどな・・・と思いつつ、しかしなかなか海外の方と事例について質疑をする機会ってないなあと思って、気さくな人だと思う。
例によって、ミーハー写真も撮りました
Larson2
左から、住友病院の須黒さんとLarsonさんと私

残念なことに終電が早く、ギリギリ最後で抜け出さなくてはいけなかったので、ダッシュで駅に向かう。

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投稿者: 西川公平
2012-11-26 03:33

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