2011/11/30: 行動療法学会参加記 〜1日目 西川

東京は飯田橋レインボービルで行われた第37回日本行動療法学会大会に参加してきました。初日の様子です。

日常閉じこもって臨床活動をしているとどうしても頭が固くなってしまうので、色々な人と接して学ぶのは楽しくもありいい機会でした。
CBTを学ぶ会でも時々研修会を開くことがあるのですが、それでも相当大変な事務作業が付きまとうので、あのような学会大会を引き受けるという事は、着実に健康被害をもたらすと思います。そういった意味では大会長の福井先生や事務局の三浦先生のご尽力に感謝します。

一日目はワークショップで、ACTと、摂食障害と、ケースフォーミュレーションについて学びました。
ACTの話は武藤先生がしていて、中々に話が上手で面白かったです。臨床をされない方とは思えないぐらいで、あのような話を描き出しているのだとすれば、相当に想像力と言うか、現実検討力というか、臨床の場で起こっていることをイメージする力のある先生だろうと思います。
あえて苦言を呈せば、認知療法を引き合いに出し過ぎていていささか大人げないといった所でしょうか。
「認知療法」という言葉が何回出てくるのか30分間カウントしてみた所、11回使われていました。3分に1回・・・。
まあ、行動療法というのは認知療法にとって“お兄ちゃん的存在”なので、弟にあれこれ言いたくなる気持ちなんだろうと思います。

お昼ご飯は、事務局が丁寧にランチマップを用意しておいてくれたので、その中でも遠そうな店であるSorrisoというイタリアンに行きました。ランチマップにおける距離とは、「ここはちょっと遠いんだけど、やっぱ外せない」店であると作者が思っただろうと勝手に想像しています。期待通りSorrisoは相当おいしい店で、ご満悦でした。

摂食障害の話は、講師の患者さんに対する尊敬の念が足りない感じで、いささか鼻白みました。なんというか古き白い巨塔の存在感がありました。しかしそれは摂食障害のPtさんに数多く接してきたゆえのカウンターで形成されてしまった陰性転移なのかなと思ったりしながら、ぼんやり時を過ごしました。そうしているうちに何と言っていいのか、段々オネエの毒舌みたいに聞こえてきて、ぜんぜん気にならなくなるという体験をしました。これがハビチュエーションか、と思いました。

最後のケースフォーミュレーションの話は、松見先生がしていて、私は松見先生がCBTの話をするところを聞いたことが無かったので、どう説明するのかに興味がありました。WSの中で松見先生自身のヒストリーなども語られたり、またその話しぶりから日本のCBTの重厚さを感じ取ることが出来たので非常に良かったです。特に感じたのはその言行一致振りと言うか、ポジティブに評価する事の首尾一貫性です。
面接ではポジティブに言うけど裏ではネガティブに言うとか、クライアントにはポジティブに言うけどスタッフにはネガティブに言うとか、BTにはポジティブに言うけどCTにはネガティブに言うとか、CBTにはポジティブに言うけど他の療法にはネガティブに言うとか、とかく我々は言行不一致がはなはだしい所で、そういう事のない松見先生の話しぶりに感嘆もしたし、我が身を振り返って反省もしました。
印象に残ったのは「なぜ私は今この事を話すのか」という説明が丁寧な事でした。それらはきっと心理教育の丁寧さにもつながっていて、ここでも言行一致が見られるのだろうと思います。

その後は、いつものごとくホテルに帰って缶詰で翌日のケーススタディー資料作りに臨みました。私も年で、年々他人の資料の手直しをしなければいけない事が多く、そんなこんなで大体3時ごろには出来上がったのではないかと思います。
資料を作っていてよく思うのは、少なくとも臨床の現場で何が起こっていたのか、クライアントさんの身に何が起きていたのかがイメージできるように記述されていることが大前提だと思います。そこに必要なのはクライアントさんの身になりきるフィッティング能力と、クライアントさんとのやり取りから完全に俯瞰するディスタンス能力の両方が必要で、まあつまり国語力が要るのかと思います。ですから臨床家を目指す人は、主人公になりきりつつ作者になったつもりで、たくさん読書されるのが良いかと思います。
話はそれますが、私のケース報告を聞いたある人から「読書みたいですね」と感想を頂いたことがあって、それには本当に驚かされ、また嬉しくもありました。
そんなこんなで一日が過ぎました。
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投稿者: 西川公平
2011-11-30 09:49

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