未だに言われるこの都市伝説に若干のイライラを込めて。
別に反精神医学とかではないつもり。
「強迫症状を治療すると統合失調症になる」という都市伝説がある。
もう少し詳しく言えば「強迫性障害は強迫症状で自分の身を守っているので、そのような防御を取り払ってしまうと統合失調症を発症してしまう。」というのがその伝説らしい。
都市伝説どころか、ちょっと年配の精神科医と話すと、「僕らが学生のころは皆学校でそう習った」とまで言われる。それも一人や二人ではない。だから、実際のところ精神病理の先生か誰かが、かつてそう教えていたんだと思う。
開業カウンセリングルームとして、強迫性障害の方に曝露反応妨害法を施術するにあたって、病院に紹介状をもらおうとした時に、断られる理由の一つにもなっている。
しかし、21世紀にもなって、そんな都市伝説を信じているのはどうなんだろうと思うので、ちょっと記事にしてみようと思う。
まず、一つの事実として強迫性障害といわれている病気があり、統合失調症といわれている病気があり、どちらも何の物理的検査にも引っかからないので、客観的に区別をつける事は難しいというのがある。
もう一つ、強迫症状を呈する疾患として、強迫性障害、知的障害、発達障害、そして統合失調症があるのも事実だ。
例えば、統合失調症の患者さんで、初発症状として強迫症状が出現して、それがいったん収まった後、幻覚・幻聴、妄想等のいわゆる統合失調症的な症状が出てくることもある。もちろん統合失調症の患者さんで、バリバリ現役で強迫症状を出している人もいる。
ただ、もしそのような事実を元に、先の都市伝説が形成されているとしたら、それは余りに論理整合性がない。
“骨折すると発熱するから、発熱したら骨折だ”ぐらいの勢いで、くそみそ理論だ。
そもそも強迫症状を呈する統合失調症の患者さんと、強迫性障害の患者さんの鑑別診断を間違うなんて事があるのか疑問だ。たとえPsychoticな症状があったにせよ強迫性障害は強迫性障害で、統合失調症は統合失調症で、違いは歴然としている。(自我違和感とかではなくね)
なんなら、「パキシル山ほど入れても効かないし、便器触れと命じても言う事聞かないから自我違和感もないし、やっぱりこいつは統合失調症だ」ぐらいの勢いで、手ひどい医者も居る。
もうなんか、どうしていいか判らない。
結局のところ、そのような都市伝説をさもありなんと唱えている人々は、そもそも強迫症状を治療できた事が一度でもあるのか疑問だ。
「1000人の強迫性障害の患者さんを治療してきっかり強迫症状を取り去ったら、その内950人が統合失調症を発症した」とか、そういう証拠に基づいた発言では全然ない。
もう少し踏み込んでいえば、ある種の精神科医は精神科疾患を治さない事や治らない事に対して諦めの境地みたいなものに立っている。
臨床心理士は言い訳の境地に立ってるけどw
強迫症状を上手く取り去る事が出来ないという治療における不作為を、「治さない方が身のため」などという言葉で誤魔化すためにそのような都市伝説が産まれ、今も機能しているのだとすれば、それはあまりにも悲しい事実だと思う
そして、その種の言い訳は、「Ⅱ軸があるから」とか、「発達障害だから」とか、「双極Ⅱ型だから」とか、流行り廃りで形を変えながら、だらだらと続いていっている気がする。
HTsu on 2010/08/15 2010-08-15 11:42
久しぶりにブログがアップされているのを見て、少しでも強化子として機能すればいいなぁ・・・という思いも含め、コメントしました(^^)
私も、「強迫症状を治療すると統合失調症になる」という都市伝説を聞いたことはあります。
やはり、強迫性障害と強迫症状との見極めをしっかりしないといけないな・・・という印象があります。
蛇足かもしれませんが、強迫性障害の方に、CBTが奏功したとき、その主治医がボソッと「強迫性障害って治るんだね」と語ったことがありました。 論文や書籍では多く述べられているけど、実際に見ないと伝わらないことってあるなぁと実感しました。
ということで、実際に強迫性障害に対し、CBTが効くということを伝えていくためにも、”強迫症状を上手く取り去る事が出来ないという治療における不作為を、「治さない方が身のため」などという言葉で誤魔化す”・・・・そんな言い訳をしなくてよくなるためにも、、私も、一人一人丁寧に面接していこうと思っています。