2008/02/29: 暴露法と反応妨害法

エクスポージャーとレスポンスプリベンションの違いについて

暴露反応妨害法(E/RP)は大方の不安障害に使えて、何なら不安障害ベースで抑うつ症状なんかある人にも使えたりする分、結構重宝する技法です。
認知行動療法の治療成績が良いのは、この技法のおかげと言っても過言ではない。

まずは、強迫性障害と、特定/単一恐怖症に対してとっても良く効く。次にパニックと対人恐怖についても、まあまあ効く。
分けて書いているのは、効きが少し違うからです。

さて、暴露法と反応妨害法は、実際のところ目的も違うし、やり方も違う技法なんだけど、どうも区別がついていない人が多いような気がしてます。
他の治療者の下でCBTを受けたが効かなかったと言って来る人達って、暴露はしているけど反応妨害がいま一つだったり、反応妨害はしているけど暴露していなかったり、なんだか中途半端な事が多い。
治療プログラムの設定上、そんな中途半端なセッティングはありえないと思うんだけどなぁ。
なんせ暴露反応妨害法がうまくいっていないとき、どっちかもしくは両方が下手なセッティングになっていると思う。

ばくっと言えば、暴露ってのはUPすることですよ。
つまり強迫観念に沿ってその状況から最大限不安や不快感を感じ取れるように設定する。
逆に言えば、設定上は普段のナチュラルな症状時よりも、さらに嫌な感じがするようになってないと暴露とは言わない(実際は意外と嫌な感じがしないことも多々あるが)。

何のためにそうするかというと諸説あって、記憶を書き換えるのにその不安の業火が必要不可欠だからとか、嫌な気持ちをアクセプトするためだとか、あるがままに恐怖突入だとか、いろんな人が適当な事を言ってるけど、まあ治療上は不必要な解釈だと思う。患者さんが納得しやすい形で説明されるのがいいと思います。

ちなみに応用行動分析的に言えば、暴露法がターゲットとしているのは「消極的回避行動」の消去だったり、レスポンデントの消去だったりするのかなと思います。。
でもって、反応妨害ってのは、「積極的回避行動」の消去です。負の強化がなされているものを消去しようとしている。

反応妨害はどちらかと言えば、下げない事です。曝露でせっかく上げた不安を、下げないようにキープするのがコツかなと思います。

社会不安障害の安全確保行動を止めさせるってのも、これに近いものがあるけど、強迫性障害ほど嗜癖的な行為でないから、あんまりパッとしないんじゃないかなぁと思う。いちおう引き出しに入れておけって感じでしょうか?

さて、仮説というか良く使う説明として、これらの2種類の回避行動が不安を維持悪化させる要因だとされているんだけど、そのメカニズムは意外と根拠薄弱なんじゃないかなと思う。
いや、たしかに外出しなくなったり何も触らなくなってるのは増悪だけど、それらを改善することが根本的に病気を治療する事になるというのは、もうちょっと詳しいメカニズムが必要だと思う。
臨床屋さんは感覚的に使って、効いてりゃそれでいいのかも知れんけど。

逆に言えばそうじゃないタイプの人、たとえばPanicDisorder w/o Agoraphobiaなんかの人は、あんまりトリガーもなく、のべつまくなしに発作が起こるけど、発作が起こった状況を避けるわけでもなく・・・、といった感じで暴露反応妨害法のセッティングが難しい。
昔は「アゴラフォビアが無いってなってるけど、実際はどこかに絶対あるんじゃないか!理屈ではあるはずだ!」と、目を皿のようにして探してみたこともあるけど、あんまりそんなことしても意味がないなぁ。

そもそもパニック障害って、来談者中心療法にも反応したりするから、よう判らんのですけど。
こないだもPanicDisorder w/o Agoraphobiaの人に、あれこれ家族の事とか話してもらってたら、「すっきりしました」とか言って、それ以降ほとんど症状が出なくなったりして、謎。

そんな感じで、ぐだぐだになって終わります。
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投稿者: 西川公平
2008-02-29 20:58
カテゴリー: テクニック

Comments

ちー on 2008/03/03 2008-03-03 00:34

こんばんは(・ω・)ノ
>暴露はしているけど反応妨害がいま一つだったり
パニック障害の方,暴露課題を設定した後,自分でやってもらっていますが…後日報告頂くと,ちょこちょこ積極的回避行動ありました。
→こんな時,積極的回避行動を再度説明した後に「“一切”しないで下さい」と言えばいいですよね?患者さんに合わせた積極的回避行動一覧表でも一緒に作って,一度目で確認しておく方が必要あるでしょうか。何か工夫されていること有りますか?

また恐い場所への暴露中に「こわいことは起こらない。大丈夫」などと考えることが多い方に,「こわい…こわい」と声に出し言ってもらいながらの暴露はありですか?身体反応や気分を丹念に探ってもらいながら30分以上過ごしてもらう方が良いでしょうか?
と…そもそもココで質問しても良いんでしょうか。
>PanicDisorder w/o Agoraphobiaの人に、あれこれ家族の事とか話してもらってたら、「すっきりしました」
そんなことが…。話すだけで?それでも,診断名はPanicDisorder 治っちゃうんですね,不思議。

gestaltgeseltz on 2008/03/03 2008-03-03 00:51

ちーさん
>「一切しないでください」
 そうカウンセラーが宣言することで患者さんがしなくなるという素敵な関係性があるなら、それがベストです。
 結局のところ暴露が損なわれるほどの積極的回避行動なら止めにゃならんけど、ちょっとぐらいなら、まあエエかなとも思います。

>「こわい・・・こわい」と声に出し
たとえばお化けが怖いんだとすれば、「お化けが出る、お化けが出る」って風に起こるかもしれないと恐れてる対象を出すのはありだと思うけど、「こわい」って気分そのものを声に出すってのは、うーん、どうだろ。
方向性としては、怖さをアクセプトする方なんで、良いのかなぁ…。
いやでも、発声することで緊張を緩和しようとしている気がするから、その行動がもっと酷くなる想像を静かに膨らませるのがもっともエクスポージャーを邪魔しないと思う。

ちー on 2008/03/03 2008-03-03 23:10

西川先生
暴露何十分もの間,一体何をしていれば?と質問頂き,確かに…( ̄ω ̄) 「〜や〜などは回避行動にあたるので,一切何もせず,ボーとしてて下さい。時々,体の反応を確かめて」と言ったら,すんなり了解頂きました。お茶はokとしましたが。
>ちょっとぐらい
ちょっと…。ちょっと…。んんー。
>起こるかもしれないと恐れてる対象を出すのはあり
では,「心臓発作が起こる,発作が起こる」って言ってもらう&身体反応・気分を確かめてもらえばいいですか。嫌がられるなきっと…動機付けして,了解取ってからゴーですね。 有難うございました!!

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