2008/02/23: 思考中断法と自己教示

古式ゆかしい、テクニックです。

行動療法の技法に「思考中断法」というものがある。
ネガティブな気分になりそうな考えがたくさん頭の中に出て来た時に、「Stop!」と叫んだり、真っ白なペンキを塗っているところを想像したり、とにかく文字通り「考えを止める」ことを目的としたテクニックだ。
また「自己教示」というものもあって、自分のポジティブな側面などを自分に言い聞かせる言葉をつぶやくなどというテクニックだ。

これらは思考の回避やメンタルリチュアルとどう違うのだろうか?

つまりあるネガティブな考えを考えないようにしてしまう事や、ポジティブな事を自分に言い聞かせる事は、より生活をしやすくするのだろうか?それとも逆なのだろうか?

現在の私の個人的な解釈では、思考中断法は役に立つが完全ではないとを思う。
しかし、あらゆるネガティブな思考をいちいち再構成するのは手間暇がかかるし、話がずれていくとも思う。

ネガティブな思考が、別の(現在の状況とは結びついていない)ネガティブな思考のトリガーになっているような、つまりネガティブ思考の連鎖が強いような場合は、最初は思考中断であらかた枝打ちしておく。
その技術がこなれてくると、だいたい状況にフィットした思考のみが抽出されるようになるので、そこから認知再構成をかけるという二段構えだ。
これだと患者さんにとってみれば、効果の発現は早いし、認知のクセは合理化できるし、いいとこ取りだと思う。
逆にずっと思考中断の技術を高めていって、達人の域に達したら合理化なんて必要ないのだろうか?

これは人によっては必要がないと思う。どちらかと言えばアスペっぽい人みたいな、言葉が熱くてもWetでない人達は、からっとしているというか、思考中断でほとんど済む。
逆に、どちらかと言えば神経症っぽい人は、「真の腑に落ちる納得」感を目指すので、少し綿密なデコレートの方がよさそうに思う。
つまり、結局人による。

さて、「自己教示」と「メンタルチェック」はどうだろう。
不安な時に「大丈夫」と言い聞かせる事は、不安の仕組みに対して短期的に効果があるが、不安発生の仕組みの長期的改善をもたらすだろうか?
これも結局人による。でも、もう少しいろいろ考えてみると、面白そうだと思う。

それにしても人による、といって決着するのがとても楽だと思った。
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投稿者: 西川公平
2008-02-23 12:00
カテゴリー: テクニック

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