猫も杓子も、発達障害とか、自閉症スペクトラム障害の傾向があるとか、そう言っておけばわかった気がするみたいな風潮がある気がします。
なんでそんな間違いが起こっているのかについて、自己流に考えてみました。
「発達障害の特徴」と呼ばれる症状のほとんどは、とくに発達障害にのみ限られものではなく、こころの困りごとを抱えた人にはよくみられる一般的な症状です。
つまり、特異度が低い(共通性が高い)症状です。
特異度が低いというのは、例えば発熱みたいなもので、風邪でも、インフルエンザでも、胃腸炎でも、骨折でも発熱はする。
そういう意味ではあらゆる発熱を風邪だと思っちゃうのが危ないように、特異度の低い症状から病名を特定するのは危険なことです。
ついでに言えば、アダルトチルドレンとか、大人のADHDとか、そ―ゆーのも、特異度の低い症状を羅列することで「誰でもそういう感じ」を醸し出している。
「こだわりが強い」とか、「好きなことは集中できるけど嫌いなことには取り組めない」とか、「指示があれば動けるけど、指示がないと戸惑う」とかは、子供においてごく一般的な困りごとであって、何らかの障害、病気の症状と呼べないこともしばしばある。
この「発達障害は特異度の低い症状の集合体」というのは、逆に結構やっかいで、うっすらとであればありとあらゆる困りごとが出る。
パニックも出るし、幻聴・幻覚も出るし、解離も出るし、トラウマも出るし、強迫も出るし、・・・・
で、ごく一般的な精神疾患/精神症状を知らない人(”発達障害のみを専門にしている心理士”など)にとっては、あらゆる精神症状が出ちゃう発達障害ゆえに「あの困りごとも、この困りごとも発達障害から来ている!」と、かなりダメな見立て違いを犯してしまう。
それがもたらす一番の害は、改善可能な疾患を、改善不可能な疾患と見立てていることにあると思う。
あらゆる皮膚のくすみやほくろを「悪性黒色腫ですよ」と見立てるのは、結構酷い間違いだ。
これに一役買っているのがASDの疾患概念におけるSpectrumの無限拡大解釈というか、これを「要するに程度の濃い/薄いはあっても、人間はみんなAutismなんだよ」という風に拡大しちゃう。
そうして、「うつ病も根本的にはAutismがあるから」とか「夫婦で揉めるのもAutismがあるから」とか、もう訳が分からないとっちらかり方した専門家が増産される。
これは残念なことに、精神科医ですら、結構そういう診断する人がいる。
最後に誤解の無いように言えば、もちろん普通にASDの人はいる。しかし今のところあまりに偽陽性が多いように見える。
そしてCBT的に言えば、「ASDかどうかは割とどっちでも良いから、生活の不便を減らしていくように整えていって、何の生活不便もないのにまだ妙なところがあれば、それにASDと付けたければ付けてもいい。でもそれにあんまり意味は無い」といった所だろうか。
Twitterより転載・一部改変
https://twitter.com/gestaltgeseltz/status/972312138617307143