2013/07/09: 雑談について

「職場の雑談が苦手」という方は結構いらっしゃいます。
中には「雑談が嫌だから昼休みはずっと車内で過ごしています。食事も車内で採って、食べ終わったら寝ています」みたいな強者も居ます。
まあ、別にそれでもいいのですが、雑談についてアレコレ書いてみます。



雑談とはどういう機能を持った行動かというと、これは、猿のノミ取りと一緒で二者間の緊張をとるという意味合いです。
例えば「エレベーターの狭い空間で、一杯に人が詰まっている」ととします。
パーソナルスペースも侵されて、ちょっとばかり緊張感が高まります。

そんな時に隣の知人にぼそぼそどうでもいいことを喋ると、それだけでなんとなく緊張が下がってくれます。
逆に言えば、そのような緊張緩和作用を持つ雑談をすることで、「私は安全な者なのです」という情報を相手に提供することにもなります。
営業や研修やカウンセリングなどでもちょっとした雑談を入れることで、緊張感を下げることができます。

色々な人が色々な理由で雑談を敬遠していますが、とある人は「うっかり喋ってしまったことが、その人を傷つけはしないかが心配だから」という社交不安系の心配で敬遠されていました。
雑談には根本的に中身はありません。
おはようという言葉に「早い」という意味がもはやないのと同じで、雑談は
「我々は雑談をする仲である」という意味以外の内容など無いのです。

雑談が苦手な人には、「どんな話をしていいかわからない」という人も居ます。
そういった意味では、雑談に選ぶテーマは、全員が共通して体験するような事柄がいいでしょう。

天気や温度、昨夜の台風や地震など、私もあなたも等しく体験していることは雑談テーマとして適切です。
もう一歩踏み込みたい場合は、「この人にはこのテーマで雑談を振れば鉄板」というそれぞれの人に対して作っておきましょう。
たいていはその人がよく話題に出す事で、自分が話題に乗せても苦痛でないものです。
逆に、職場などでは、「私に雑談を振る時はこのテーマにして下さい」というものを明白に提示しておかなければいけません。つまり、「私にはマラソンで話しかけてください」とか、「ラーメンで話しかけてください」とか、そういう分かりやすい誰もが話しかけられるテーマを相手に伝えておく必要があります。

そういった雑談用の趣味は、ほんとうに自分が好きである必要すらありません。
言わば出城みたいなもので、それで話を合わせておけば御の字という名刺です。
相手の雑談のテーマも、本当のところ相手も大して好きではないかもしれません。
要は予定調和的な話題で、本当のところは緩衝材程度の役割なのです。

雑談が苦手な人は、とりあえずは耳を澄ませて、職場で周りの人がどのテーマで雑談をしているかメモを取りましょう。
Aさんは釣り、Bさんはスイーツ、Cさんはテニス・・・etc.
ある程度聞いていれば、結構同じ話ばかりしています。

A:暑いなあ。
B:ほんま暑いなあ。
A:こんなに暑いと嫌になるよなあ。
C:ほんまやなあ。
B:暑すぎて動くのだるいわ。
A:動きたくないなあ。
C:暑いしなあ。
この雑談の意味の無さは最たるものです。
暑さについては、まあ暑いのでしょうが、肝心なのは
[我々は雑談をするような仲だ。雑談できるし危険じゃないよ。]
というメッセージの方です。

さて、雑談の機能は分かったとして、必要性はどうでしょう?
雑談はする意味があるのでしょうか?

雑談は「投資」として考えましょう。
例えば職場のすべての同僚と「雑談が成り立つ仲」になっておくのは、分散された投資であり、より安全です。
すべての同僚と雑談をしたということは、少なくとも一度は緊張を下げあったということです。


逆に、誰か特定の人と、長時間の雑談をすることは偏った投資になります。
そのような偏りは、投資先がコケた時(異動や退職)には逆ざやを食らう可能性があり、オススメ出来ません。

雑談は簡潔に。ヒット・アンド・アウェイで。
ポイント制のゲームだと思っていただいても構いません。

一方で、雑談は投資以上のものではありません。
雑談の末に同僚と仲良くなったり、友だちになったり、恋人になったりすることはありません。
そのようなことを狙う事自体が雑談の機能を履き違えています。

友達や恋人になってはいけないということではありませんが、それをこちらが求めても相手がそのような関係を望んでいるとは必ずしも限りませんし、むしろ何を勘違いしているんだということになって後、大変に気まずい思いをすることになります。
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投稿者: 西川公平
2013-07-09 21:50
カテゴリー: 雑談

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