2013/03/12: 精神科診断学概論を学んで

北村メンタルヘルス研究所の研修「最初から学ぶ精神科診断学概論」に参加しました。
我々心理士は取り立てて診断をするという立場にはないけれど、しかしココロの困りごとに携わるものとして精神科診断学を学んでおく必要があるだろうと思い、受講してみました。
講義いただいた北村先生はユニークかつ義憤に燃える方で、とても好感の持てる人でした。
感想などを述べてみます。


まず、診断の歴史たる記述精神病理学からスタートした後、DSMに始まる統計学の話へと精神科診断学の話を組み立てておられて、印象に残りました。
テスト理論における因子分析が診断基準における考え方の基であり、診断行為とはクラスター分析と同じだとおっしゃっていたのも、言われてみればそうだけど、なんだか不思議な感じでした。
でもまあ、DSMは統計学者だか、コンピューター技師だかが入って作ったものなので、そうなんだろうと思います。

そこからSEMの話に行きつつ、ご自身の研究を交えてDepressionに影響をあたえるのはまずい親の養育からの直接のパスではなく、まずい親の養育が影響するスキーマや自動思考の方だと述べておられました。
心理テストにせよSEMにせよ、そこまで頑健なものではないので、そう言い切られるといささか面映いところがあります。

しかし、その研究を云々することではなく、そもそも診断行為とは何に基づくべきなのか、精神科診断学が科学としてあるためにはどうするべきなのかということを熱く語られて、考えさせられるお話でした。
一方で、統計について北村先生は独自に勉強されたということですが、精神科医という職種は統計を学ぶことが殆ど無いのだなあということもまた印象に残りました。心理学の学部生が習うレベルの統計でしたが、それでも参加者は難しいと思っているようでした。

ここからは研修と関係ないよもやま話

心理士が診断に口を出すということはまず滅多にないのですが、例えばうつ病だと思っていたら、躁うつ病のエピソードを発見した時などは、主治医に報告書を書くことがあります。
というより、薬物療法が全然変わってくるので、それを書くことは必須です。

うつ病だと言われている人に併存して社交不安があった時はどうかといわれると、どのみち薬物はSRIだし、精神科医には社交不安をどうこうする時間的・技術的な余裕がないだろうから、黙ってこちらで対応します。
実際気分障害は医療機関、不安障害は認知行動療法と分けていった方がお互い楽かもしれません。


臨床をしていて、うつ病の本体であるアンヘドニアや思考制止などの認知機能低下に対しては、認知行動療法はそれほどピンとこないのかもなあと思います。
あくまでその本体から二次的に出現する、活動量の低下や、抑うつ思考、不快気分など、更にそこから三次的に出現する対人関係上の困りごとなどを扱うことによって、患者さんが二重三重の負のスパイラルに陥らないようにして、よく休めるようになり、回復するようになることのお手伝いなのかもしれないと思います。
要するに、こんがらがっている難治性のうつ病の人を、普通に薬と休息が効くうつ病の人にのが認知行動療法という感じがします。

そういった事柄も、SEM的に変数、ダミー変数ぶち込んでパス書いて、確かめていけよということなのかもしれませんね・・・。んー、統計って判るけど嫌いだからなあ。
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投稿者: 西川公平
2013-03-12 02:31

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