2011/07/28: 認知行動療法研修センター(仮)の設立準備中 その壱

滋賀医科大学地域精神医療学講座と共同で認知行動療法研修センターを作る予定です。

とりあえず今回は、CBTを学ぶ会のこれまでや反省などを書いてみました。

これまでCBTセンターでは、認知行動療法の普及を目指してCBTを学ぶ会を立ち上げ、月一回の事例検討会を5年にわたって行ってきた。それに加えて単発の研修会を十数回行ってきた。
さらに、地元の臨床家の要請を受け、福井、三重、大阪、神戸、福井嶺北などなど勉強会の場所も増やしていった。

しかし、認知行動療法が普及するという事や熟達するという事に関して言えば、なかなか難しい所がある。
たとえば「じゃあ、勉強会や研修会に出席していた人は、認知行動療法が施術できるの?」という疑問がある。

感覚的にではあるが、勉強会でケースを報告した人は、わりと〜時々の範囲で認知行動療法を施術している。
こういう人たちはケースに対するコメントもCBTのテクニカルなものにおよび、ディスカッションも白熱する。

逆に、全くケース報告をしていない人は、単なるお客さんである。
本人たちは「”いつか”施術しようと思って勉強している」気でいるが、おそらくその”いつか”は永遠に来ない。
コメントする時も、「私はCBTの素人なのでわかりませんが・・・」という接頭句をずっとつけ続ける。

CBTを学ぶ会のコンセプトや定義は、認知理論や行動理論に基づくこともさることながら、臨床家の臨床を邪魔しないという事も重要なポイントだと思う。
例えば、勉強会立ち上げ当時からよく来ていてくれた阪本病院の久保田先生や嶺南病院の岡本先生は、基本的にユニークな人たちなので、そのユニークさが活かされるように、いわばCBTが臨床家の持つ個人的なチャームポイントの邪魔をしないようにという事を思っている。
ただ良く言えば上記のようになるが、悪く言えば捨て育ちと言うか、「何を言っても言われなくとも勝手にやっていく人たちだけが勝手にCBTをやっている」みたいになる。ある特殊なエネルギッシュな人々だけがやっているCBT・・・。

CBTを患者さんに施行する時は「心理教育を丁寧に」と言う割に、勉強会では「ケース報告見て勝手に学べよ」というギャップがある。
実際の所、「CBTのケース報告を見て勉強可能な地域なんて、日本全国でごくわずかに限られているわけだから、見られるだけでもありがたいと思え」的な、ある種の思い上がりがそこにはあるのかもしれない。

要するに「ケース報告を見る場とケース報告をする場の提供さえあれば、その地域にCBTは普及するのではないか」という試みがCBTを学ぶ会だったわけだ。
しかしその試みは、どちらかと言えば上手くいっていない。相変わらず滋賀県にはCBTは普及していないままだ。

CBTを学ぶ会を始めた5年前は、今ほど認知行動療法がどうこう言われてなかったので、「ま、時代を先取りしすぎててシャーないかな・・・」と思っていたが、保険点数化された今も全然と言うのはかなり微妙だ。
ここには構造的な問題があるんじゃないかと思う。

構造的な問題というのは、私があまり組織やシステムというものに所属することを潔しとしない事から、地域の精神保健福祉関係の様々な既存のシステムとつながりを持てていないという事だ。

例えば、お医者さんのイベントには大抵なぜだかお薬屋さんが噛んでいる。これは、お薬屋さんがお金や会場や広報や受付や、販促のペンや、ノートやお弁当やその他諸々の手当などを担当しているという事で、それにはそうするだけのメリットがあるという事だと思う。
あるいは、地元の偉い精神科医の先生から研修の頭に演説をぶってもらうやり方もあったかもしれない。
あるいは、臨床心理士会のポイントを付与できるように働きかけるなど、もう少し大きな権力に取り入る形で進めて行くやり方もあったかもしれない。

いずれにせよ、そのようなやり方をこれまではしてこなかったし、今後もするつもりが無い。
「利用できるものは上手く利用したらいいんだよ」という考え方もあるだろうが、CBTを学ぶ会なのにCBTを学びたいという気持ちではない人が噛んでくるのは、非常に気持ちが悪い。


話がそれましたが、認知行動療法研修センター(仮)の設立準備ですね。
要するに、”自分でガンガンやっちゃうぜ!ケースも報告するぜ!”みたいな人ではない人もこの世の中にはたくさんいるわけで、ちょっと手取り足取り教えましょう系のコースを作ってみようかと思うわけです。
ちょうど滋賀医科大学地域精神医療学講座と共同で開催予定なので、現在その構築に向けて莫大な事務仕事をこなし中です。

ゆくゆくは色々なCBTを施術する機関と連携できるようになればいいなと思います。

今の所、
滋賀県で開催
定員はごく少数(10名ぐらい?)
有職専門家に限る
研修はWeekdayの毎週一日3か月間を1クールとする
顧問はやたらゴージャス?

てな感じになっています。
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投稿者: 西川公平
2011-07-28 17:05

Comments

piwi on 2011/07/29 2011-07-29 00:26

とても大切なポイントをついていらっしゃると思います。
先日,R大学で学生相談にCBTアプローチというタイトルで話すように命じられ,行ってきました。ケースを治せるまでならなくとも,何か役立つものを一つだけでもお土産にしてあげたいと考え抜いたら,セルフモニタリングを教えようと思いました。
でも50分しかなかったので,撃沈しました。手とり足取り教えて貰ったはずなのに,自分が伝える側に回るととても難しいのを感じます。

gestaltgeseltz on 2011/07/31 2011-07-31 16:46

>piwiさん
治療者教育関係と精神分析関係には、手を出すとイラッとするから、自分の精神衛生上近づかないようにしていたのですが、まあ時の流れというかそういう事に相成りました。
いずれにせよ講義半分実習半分という実践的なものにしたいです。

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