2008/03/01: 精神疾患からの急激な回復

たまにいる、予期せぬ急な回復を見せる人について

特に私が何をしたということもないのだが、カウンセリングに一回来て急激に治る人がいる。
認知行動療法的にはそういう急激な回復はあんまり予期していないので、びっくりする。
特に疾患名に限定があるわけじゃなくて、うつ病でも、強迫性障害でも、パニック障害でも、そういうケースに出会う。
なんとなくだけど、若い人とか、病歴の浅い人に多いかなぁとも思うけど、そうでない人でもスカッと1,2回で良くなることがある。

これって、どういうことなんだろうか?

例えば考えられるのは、その人は「お金を出してカウンセリングを受けよう」と決意し、予約を取り、カウンセリングの場面に臨んだというプロセスそのもので良くなってるということだ。
そのプロセスには紆余曲折、艱難辛苦、山在り谷在りあったことだろうけど、結局のところカウンセリングに到ったので、もうそれで良くなったという考え方。

他に考えられるのは、そういうすぐ良くなる人たちが言う事に、「良くなるとは思っていなかった」とか、「自分でもやりようがあるんだと思った」などという言葉の陰に、「良くなるとは思ってないし、自分ではどうしようもない」という絶望があり、それが一回目のカウンセリングで払拭されて良くなったということ。
一回目って大事だなあと思う。
しかしこれって、どっちかというと来談者中心療法的な回復だな。

その亜形かもしれないけど、ずーっと薬だけをもらっているとか、いわゆる3分診療を受けていたことで、どんどん回復の希望が薄まっていたというのも良く聞く。まあ、三分診療になるのは、国家が保険として3分診療と是としているからであって、個々の精神科医はもうちょっと話聞いてもいいかなーと思ってるんだろうから、とフォローしておく。

しかし面白いのは、まだ良くするための治療そのものは開始して無いに等しく、話を聞いて、まとめて、認知行動療法の大枠を説明をして・・・、というアセスメント・心理教育のプロセスの内に症状が回復してしまっているというところだ。
こっちとしてはさて、どう治療を展開しようか・・・と思っているところで、治す対象がなくなってしまうので、??あれ??と肩透かしを食う。
昔はそういう場合でも、用意していた治療を展開しようとしたりもしたけど、そのうち馬鹿らしくなってやめた。すでに良くなってるものを治しようがない。

そしてそういうすぐに回復する人たちは、すぐに悪くなるかというと…、特にそうでもない。医療関係や産業関係で、カウンセリング終了後の状況を垣間見る機会があったときに覗いてみると、良い状態がキープされている。

結局のところ、そういう回復と脳生理的な変化ってどうなってるんだろう?
こころの病気は脳生理的な切り口からも説明可能だけど、こういった類のこころの病気の回復って、なんらか説明つくのかな?脳って最もスピーディーに変成して、大体どんなものなんだろう?


あー、ちなみにこれは「私は良くなりました!」と、個人的宣言をする人たちとは全然違う話ですよ。
そういう人達って、その、まあなんだ、「良くなったと思ってはるんだな」という感じというか、回復とは何かについて共通の見解が得られないままだったけど、とにかく本人の主観を大事にするしかないという感じ。
こっちが「いや、あなたは良くなってない」と言うわけにはいかないしさ。
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投稿者: 西川公平
2008-03-01 17:17
カテゴリー: 雑談

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