2016/02/28: Interruption of Development という用語について 〜認知行動療法ができること〜

先日、滋賀医科大学で開催された市民公開講座「子どものメンタルヘルスを考える〜不登校・非行を中心に〜」に参加してきました。
演者は、稲垣貴彦先生(滋賀医科大学地域精神医療学講座)で、これまでも県内各地で子どものメンタルヘルスに関する啓蒙活動に取り組んでこられています。

盛りだくさんの内容で、まだ整理しきれませんが、その中から一つ、ある用語について書いてみたいと思います。

Interruption of Development という言葉、ご存じの方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?

適切な日本語訳がないため、英語そのままの表記ですが、子どもの発達に関する重要な視点です。

子どもの精神的な成長というのは、さまざまな実生活上の経験の積み重ねによります。
家庭内から、幼稚園・保育園、小学校へ、中学校へと社会生活が広がるなかで多くの経験をします。

思い通りにならない経験、誰かと意見がぶつかる経験、誰かに認めてもらう経験などなど、人との関わりの中で私達はさまざまな経験をします。そして、それに対処するために自分で工夫をしたり、周りと話し合いをしたり、得られた経験を次の新しい何かにつなげたりするわけです。辛い感情を抱えることの耐性もついていくでしょう。

けれど、病気になるとどうでしょうか? こころの病気も身体の病気も同じです。
病気によって、社会生活が送れないと、このような経験を積むことができませんよね。

それが、Interruption of Development というものです。

Interruption of Development は病気が治ったとしても、経験不足の分が残ってしまうことを指します。

この、Interruption of Development をできるだけ少なくするために必要なことは一つ、「治せる病気があれば、早く気付いて適切な医療・治療につなげること」。

子どもの病気は、早期に適切な治療が受けられず長引くと、病気からくる二次的な困りごとがどんどん広がってしまうのです。つまり、子どもは特に、早く治せないと、こじれてしまうわけです。

治療は、Interruption of Development を極力少なくするため、そして、生じてしまったInterruption of Development を極力カバーするために行われます。

認知行動療法が役に立てるところはどこでしょうか。
子どものメンタルヘルスの問題の多くに、認知行動療法の有効性が示されています。
また、病気やその問題が解決した時、経験不足によって獲得できなかった必要なスキルを本人さんが身に付けていくことにも有効です。
認知行動療法は「治療」にも役に立つものですし、その後の社会生活の「リハビリ」としても役に立つものです。


昨日の講演を聴き、Interruption of Development の問題と認知行動療法のできることについて改めて整理してみました。

ちなみに・・・
子どものメンタルヘルスの問題、とりわけ不登校に関する当センターの介入実績については、昨年の認知・行動療法学会で発表をしています。

よろしければ、「治療成績の開示」のページもご覧ください。

http://cbtcenter.jp/room/outcome/school.php
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投稿者: 栗原愛
2016-02-28 20:09
カテゴリー: 雑談

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