認知療法とは

認知療法とはアーロン・ベック(A.Beck)、アルバート・エリス(A.Ellis)、ドナルド・マイケンバウム(Donald H. Meichenbaum)などの心理技法を元に折衷されています。
ここでは認知療法の基本的な概念である「認知」についての説明と、認知療法でそれらをどのように扱っていくかについて書いています。

認知とは何か?

認知行動療法の「認知」とは、主に「ものの見方、とらえ方」を指しています。別の言い方でいえば「思考、判断、意思決定、推量、帰属、想像、記憶、etc.」なども、この「認知」の一部ということになります。

例えば我々が何か困難を抱えている時、少なくともそれを"困難だ"と認知しているわけです。

さらにその困難を「あいつのせいでこんな困ったことになった」と考えているとすれば、さらに推量や帰属といった「認知」が働いている事になります。

認知は外界の環境からのインプットを司ることが多いです。つまり、「嫌われた」とか、「あれは嫌な事だ」とか、人が物事を把握する時点からすでに困り事が起こっている事があります。そのように入力部分で不便なクセがついてしまうと、あたかも周りで起こるできごとは「嫌な出来事」ばかりのように思えます。

そして、それらは今起こった出来事だけではなく、自分の過去の記憶についても同じで、嫌な記憶ばかり選んで思い出してしまいます。

例えば今までの人生においては良い出来事も悪い出来事もあったでしょうが、「思いだせる限りすべてイヤな事ばかりだった」などと、ネガティブな記憶が出てきやすいクセがついているのです。

認知行動療法は、これら「認知」の中でも、特に自らストレスや苦労を増やすような認知に対して、認知仮説に基づいて修正を促します。



注:よく間違えられるのですが、「認知症」の認知とは関係がありません。

認知(もののとらえ方)に関する格言集

洋の東西を問わず、自分の考え方が自分の気分や人生に影響を与えるという名言はたくさんあります。認知行動療法の考え方に近いような世界の名言を以下にそれらを紹介します。

  • ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。byブッタ
  • 世界を動かそうと思えば、自分を動かすことから始めよ。byソクラテス
  • 君がなにか外的の理由で苦しむとすれば,君を悩ますのはそのこと自体ではなくて,それに関する君の判断なのだ。ところがその判断は君の考え一つでたちまち抹殺してしまうことができる。byマルクス・アウレーリウス
  • 世の中には幸も不幸もない。ただ、考え方でどうにもなるのだ。 byシェークスピア
  • 心にはさまざまな傾向がある。いかなる物事にも単一なものとしての心に映ることはない。・・・われわれが同一の物事に対して泣いたり、笑ったりするのも、そのためである byパスカル
  • 事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。 byニーチェ
  • 考える術を教えるべきで、考えたことを教えるべきではない。byグルリット
  • 世界は自分の写し鏡にすぎない。外界にあるすべての傾向は自分自身の中にある。己を変えることができれば、世界も変わる。自分の性根を変えた男には、世界も態度も改める。これこそが教えの極意だよ。こんなすばらしいことはない。幸せはここからはじまる。 byガンジー
  • 他人の言うことは、あなた自身の考えや精神的参加を通さないかぎり、あなたを傷つけることはできません。byジョセフ・マーフィー
  • 人生は、私たち一人一人が、それぞれの目を通して見ている映画です。そこに何が起こっているのか、ということは大した違いはありません。それをどのように受け取るかが重要なのです。byデニス・ウェイトリー

認知仮説とは?

認知療法の仮説は次のようなものです。
(仮説1)人が苦しんだり、悲しんだり、落ち込んだりする気分を抱く時、その気分と結びついた「認知」が存在している。
(仮説2)気分と結びついた認知を修正する事が出来れば、気分は回復する。

認知モデル図

認知モデル

上のモデルにあるように、ある状況・出来事の下で、我々の思考や行動は自動的に出現し(それらを"自動思考"と呼んでいます)、その結果、イヤな気分が出現します。

まずは「どのような状況で、どのような思考が出現し、どのような気分を抱くか」について調べていくことが認知行動療法の最初のステップです。

認知行動療法ではそれらを調べる時に、自分の考えを紙などに書き出してもらう事が多いです(セルフモニタリング)。

次のステップでは、それらの状況で、別の考え方が可能かどうか、考えを広げる試みを行ってもらいます。

そのプロセスがうまくいけば、最初に抱いた気分はずいぶんとマシになっています。

このプロセスも紙に書いて思考のチェンジをしてもらう事が多いです。

紙上に書いてもらう理由は「紙に書き出す行為そのもの」が困った考え方に焦点を当てやすくし、それを変化させる原動力になることが多いからです。

認知療法の実際

認知療法の実際については、うつ病の認知行動療法などをご参照ください。

各種カウンセリング

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