医療機関との連携

認知行動療法(CBT)は精神科医療を受けることとバッティングしない治療法です。すなわちお薬を飲みながら認知行動療法を受けることができます。
詳しくは医療機関との連携をご覧ください。

医療機関を勧める

認知行動療法を行う上で最も注意しなければならない事は、認知行動療法が民間療法/代替医療の同じであるとみなされている事です。
すなわち、認知行動療法は鍼灸、カイロプラクティス、整体、マッサージ、ヨガ、その他の民間療法/代替医療と同じポジションにいるのです。
そのような民間療法/代替医療を行う上で最も注意すべき事は、行われるべき必要な医療行為を阻害しないことです。
つまり、「私は認知行動療法に行っているから、心療内科に行かなくてもよい」と見なされてしまうと、たいへん危険な事になります。
来談者さんの病態のレベルにもよりますが、精神科的な症状をお持ちでかつ医療機関にかかっていない方には積極的に医療機関を勧めましょう。

紹介状を書く

チーム医療、コミュニティー医療という言葉があります。同じ地域に住む他職種の専門家は互いの専門分野を尊重しながら連携を深めるべきであるという考え方です。
もし医療機関にかかる必要性があると判断され、来談者も同意したのであれば、信頼できる専門家に対して紹介状を書きましょう。
紹介状を書くという行為はカウンセラーが医者を気取っているわけではなく、より詳細な情報を、より短期間で異なる専門家に伝える手段でもあり、来談者さんの医療受診行動をプッシュする手段でもあります。
CBTセンターで1年間に書かれた紹介状32通のうち、実に82%の紹介状には返信がありました。つまり紹介状を書いたことで医療受診行動は促進されたわけです。
注:中には地域におけるコミュニティー医療を好まない病院・クリニック/ドクターもいますが、そのことも紹介状を書いてみることで明らかになります。地域の医療機関と連携連絡を行うためにも、紹介状を書くことは必要です。

紹介状(診療情報提供書)をもらう

すでに医療機関にかかっている患者さんで、薬物療法にプラスしてカウンセラーのカウンセリングを受けたい方は沢山いらっしゃいます。
CBTセンターの統計では、64%の来談者はすでに医療機関にかかっています。
少なくとも認知行動療法を開始するのであれば、主治医の先生にその旨を伝えてもらうようにお願いしましょう。そしてできれば「診療情報提供書」を書いてもらいましょう。
この事はどの来談者さんにも言えることですが、特に臨床上注意を必要とする状態(希死念慮が高い、ActingOutが多い)の時には、カウンセリングを行う上での前提条件になる事もあります。

患者さんの中には、主治医に「カウンセリングを行う」事を告げると、主治医から「私の話や診療では満足できずに別の所に行こうとしている裏切り行為だ」とみなされるのではないかと恐れている方もいらっしゃいます。
しかし、現在の日本の精神科医療のシステムにおいては、精神科や心療内科の医師は絶望的な混雑のなかで十分に時間をかけて満足な診療を行うことが不可能な状態です。どちらかと言えば多くの心ある医師はその事に対して患者さんに申し訳なく思っているので、A-Tスプリット、すなわち薬物療法と心理療法を分けて行うことに対して協力的な方が多いです。

来談者と医療機関の調整を行う

医療機関に通っておられる患者さんの中には、十分にアドヒアランスがない場合があります。すなわち怠薬、余薬などの服薬アドヒアランス、主治医に必要な情報を提供できない診療アドヒアランスなどが不足している場合があります。
それらのアドヒアランスを向上させ、よりよい医師―患者関係を構築していくこともある意味カウンセラー/カウンセリングルームの果たせる役割の一つです。
例えばもし、「ここ1週間全く眠れていない」、「最近テンションが上がってしょうがない」などという訴えがあれば、その事を主治医に伝えるよう強く勧める必要があります。患者さんたちは忙しい医師に遠慮しがちで、自分の話などで診察を長引かせてはいけないと消極的になりがちなのです。
この事は開業しているカウンセラーだけではなく、医療機関に勤める心理士にとっても、重要なポイントです。良好な医師―患者関係は結局のところ患者さんにとって利益があるのです。