認知行動療法を始める前に(スタッフ編)

認知行動療法(CBT)を施術する際、事前の準備にはどのような事が必要でしょう。
ここでは対象者に認知行動療法を施術する前に準備するべき事をいろいろ書いています。
ただし、ここで「誰かに使用」と書かれているのは、「自分の意にそぐわない誰かの考えや行動を変えてやろう」というような使用を意味しません。(例:父親の認知は歪んでるから矯正しよう、など)

認知行動療法の理解度チェック

認知行動療法は考えや行動について振り返って考えるという作業です。
基本的には人間の営みのどのような事柄についてでも、「認知」と「行動」の側面から理解をすることができるという事が可能です。
何が「認知」で何が「行動」なのかについて、理解をしているかどうかが施術できるかどうかの大きなポイントになります。
本を読んだり、学会に行ったり、DVDを見たり、ワークショップに出たり、様々なトレーニングが提供されるようになっていますが、それらを見聞きする事と使用できるようになることはまた別のことです。

現在の日常臨床を認知行動療法の枠組みで理解する

認知行動療法は心理士のみならず、医師、作業療法士、看護師、精神保健福祉士、教師など、様々な職種の人々に使用可能です。
逆に言えばそれらの人々が日常行っている会話や介入も認知行動療法の枠組みで理解する事が可能です。
もし自身がすでに臨床現場を持っているのであれば、その日常の臨床のやり取りを認知行動療法に置き換えてみましょう。
私が見た限りでは認知行動療法を少しずつ身につけていっておられる方々は、自らの臨床の枠組みの中に上手に認知行動療法を取り入れていくという形で熟達されていっています。
つまり認知行動療法とは日々おこなっている臨床と全く別個の新たな何かではなく、日々の臨床に対する別の角度からの解釈なのです。
その解釈によって、対象者に対してより有効だと思われる介入を、今より整然と、今より露骨に行う事が出来ます。

相談にのっててくれる人を探す

絶対必要というわけではありませんが、認知行動療法についてアドバイスをくれる人がいた方が良いかもしれません。
あるいは地域の勉強会、あるいは学会などでこの人は腕が良さそうだと思う人に話しかけてアドバイスをもらって下さい。
CBTセンターでも認知行動療法のスーパーバイズを受け付けていますのでご覧ください。

認知行動療法を開始する

施術を迷われる方の中には「完全に認知行動療法の基礎から応用まで理解して、幾つものワークショップを渡り歩き、とてもラポールの取れた患者さんに、かなりたくさんのアセスメントを行ってから」でないと、認知行動療法を始められないという方がいらっしゃいますが、それは畳の上で水泳の練習をするようなもので、ただの自己満足です。
認知行動療法は他のあらゆる熟達を要する技術と同じく、取り組んでみない事には技術は全く上達しません。
「もう少し認知行動療法の事が分ったら始める」や、「もう少し患者さんの事が分ったら始める」ではなく、認知行動療法を始める事で「もう少し認知行動療法の事を学び」、「もう少し患者さんの事を理解」してください。