うつ病

学習性無力感とうつ病の類似性

学習性無力感(learned helplessness)とは、動物を逃れられない状況(鎖などでつなぐ)において、いやなストレス(電気ショックなど)を与え続ける手続きを行うと、動物ははじめは逃れようとあがきもがくわけですが、だんだん一切の抵抗をやめて不活性状態に移行します。

興味深いことに、いったん学習性無力な状態に陥った動物に対して、その動物の「逃れられない状況」を解除(つないでいた鎖から解放)した後も、いやなストレスから抵抗したり逃れたりすることをせず、ずっと不活性な状態を保ち続けるのです。

このことは行動療法的には「自らの自発的行動が環境に対して望ましい影響を持たなくなったので、行動の自発性そのものが低下した状態」と定義します。

これの理論的背景を人間のうつ病に当てはめて考えているのが「学習性無力感」で1967年にマーティン・セリグマンによって提唱されました。

しかし、これらの理論は1960年代の理論であり、今日ではいろいろな批判があります。
はっきり言えば、うつ病は学習性無力感では十分に説明されません。

うつ病発生に先立って、そのような「逃れ得ないストレス因」があるわけではありません。
「うつ病とはストレスによって引き起こされるものだ」という証拠はありません。
臨床的にはむしろ逆に、うつ病を発症することによってアンヘドニア(これまで楽しかった・興味を抱いたものに、興味や関心や喜びを抱かなくなる)が起こり、そのアンヘドニアが学習性無力を発生させているように見えます。
そのような意味において、行動分析では「うつ病発病」を確立操作(行動の強化価を変動させる要因)に置くことが多いようです。

また、うつ状態はうつ病のみならず、他の身体疾患によっても引き起こされることがあり、うつ状態の何もかもを「学習性」であると考えることは危険です。

さらに、うつ病には心理的のみならず、社会的生物学的な側面においても様々な要因が仮説提唱されていますが、それについて何も説明になっていません。

最後に、うつ病に対する行動療法の治療アウトカムはそこまで高いものではありません。

しかし、それら理論的な誤謬や批判があっても、なおこの概念は臨床上使用可能なところが残っています。

例えばうつ病が長期化・慢性化したうつ状態において、二次的にこの学習性無力感と類似の状態になっており、そのことがますますうつ病を治りにくくしているということもよくあります。

そのようなときに、行動活性化技法で回復の糸口を見つけることはよくあることです。

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