2007/06/13: 性犯罪者へのCBT

前回の文章は感想にすぎなかったので、とりあえず今回意味ありげな事を書いてみた。

法務省からのお達しで、性犯罪者への矯正プログラムとして認知行動療法が用いられる事になっている。
統計によると再犯率が7.5%程度下がるそうだ。

web上の資料からおよそどんな事をしているのか、タイトルだけがわかったので、内容を想像してみた。

行動機能分析
どのような状況で、どのように考え、どのような気分がし、どのような行動を取り、環境からのフィードバックは何であったか?それらを本人に明白な形でまとめ、フィードバックしていく事は確かに衝動行為を取り巻く要因をメタ化し、自分を抑える一つの手助けになるだろうし、いつもの流れに乗らない為の対処行動を取りやすくするだろう。

認知のゆがみ
本人の中で「そのように考えると自分にとって不都合が起こる」という自覚の元、それらの考えをもう少しマシなものに変えていく努力をする事は可能だろう。
しかしそれが、「社会(外側)からみて歪んでいるから、お前はその歪んだ考えを正せ」と迫られているのであれば、ほとんど意味は無いに等しい。ただの説教だ。
受刑者本人にとっていかに社会生活をHappyに過ごせ、そのようなHappyを手放すのが惜しいと思わせるか、つまり自分が性的な衝動の方ではなく社会生活の方を優先したいと思うかという動機付けが一番難しいところだと思う。むしろ認知療法のメインはここだろう。
でも「イヤよイヤよも好きのうち」とか、「女性にはある程度レイプ願望がある」とか、「女性は強引な男性に付き従うのが幸せ」とか、「セックスの虜にしてしまえば、罪にならない」とか、もう訳わかんない妄想がいっぱいな事が予想される。難しそう。

被害者への共感
結局のところ被害者の内的な苦悩や被害の顛末についてアクセスすることなく刑期を終えれば、妄想は無矛盾で継続される事になるだろう。ある考え方と、それに矛盾する考え方をどのように折衷し統合していくかという部分において、認知行動療法のもつ技法は有用だろうと思う。

ストレスマネジメント
「セックスは楽しいものの、犯すのはダメだろ」という当たり前の事も、激しく強いストレスにさらされ続けると我慢する力そのものが弱り、まずい事をしでかしてしまう。これは「生きていくのは辛いけど,死んだらダメだろ」という当たり前が、うつ病がひどくなってくるとかすんでしまうのと同じ。キャパを越えてストレスを抱えてしまうような犯罪以外の部分において総合的にストレスが減らないと、自暴自棄になってしまう。
これは偏見かもしれないけど、性犯罪を犯す人ってかなりストレスのマネジメントが下手そうな気がする。

Be frending
友達になるってのが、直訳。刑期を終えた性犯罪者と友達になって、色んな事を喋ったり、相談したりされたり、ご飯食べに行ったりしようという感じです。これが性犯罪者と社会を隔絶しない、社会が彼らを孤立させて妄想に浸らせ続け、犯罪を犯させない、という一番の決め手じゃないかなと思います。
なんせ「普通じゃないものは隔離せよ」という社会がますます再犯率を高めているのであって、そういう社会の方を何とかしようという気配がないというか、その自覚すらなさそう。

いずれにせよ「性」ってのは難しくって、性的な指向は変化する余地が無いし、嗜好にせよ中々難しい。我々は思春期を過ぎると、性的以外の部分があれこれ忙しくて性的な部分の比重が減ってくる。しかしそれでもなお、色々と思い悩むわけですから。
思考や対人関係の元となるもの(スキーマ)が、かなり「性的な部分」に占められている場合、「性以外の部分」を充足させる必要があり、その上で「性以外の部分」を大切にする気持ちが必要だろうなあと思う。根気がいることだ。
性犯罪者というくくりは性的なくくりであって、その人達の性的以外の部分がどれだけ有るかによって、その部分に働きかけるCBTの有効性が違ってくると思う。

それにしても、この施術を誰がやってるんだろうね。CBT施術者がこの世にあふれているとは思えないけど・・・。
ちょっと難しい人たちに、かなり難しい事をしようとしているのが、素人さんとかだと、あんまりはかばかしい成果とか望めないかも。
まあでもCBTは施術について教育しやすい治療法でもあるし、きっと偉い人たちがナイスな施術者養成プログラムを開発しているんだろうと思う。
このエントリーをはてなブックマークに追加
投稿者: 西川公平
2007-06-13 14:00
カテゴリー: 様々な困りごと

Comments

コメントはまだありません。

Add Comment

TrackBack

トラックバック

トラックバッックはありません。