09/22: 成人のアスペルガー障害

初めて成人のアスペルガー障害に触れた時の感触など

人口に膾炙しているアスペルガー障害ですが、それに初めて触れた時はインパクトがあって今でも覚えている。

確かその方には「分裂病型人格障害」とか診断名がついていたと思う。副病名でも不安障害とか何とか書いてたかな?
まあ、しかし、その方の症状はいろいろあった。
少なくともある特定の場面でパニックを起こすし、やたら怒りやすいし、自傷行為はあるし、たぶん乖離してるし、対人関係もパッとしない、んーいささか多彩な人だなぁと思ったのを覚えている。
なんというか、不安障害と言えば不安障害なんだけど、人格障害と言えば人格障害で、これまでの脳内精神疾患マップのどの辺に位置付けていいのかよくわからなかった。
しかもとっても奇妙だと思うのは、それらの症状が薄っぺらいということだ。
薄っぺらいというのは説明が難しいけど、例えば自傷行為なんかはこれが人格障害の人なんかになると、極端に書けば、
「ほら、私はあなたの発言に傷ついたから手首を切ったの。心の傷は見えないけど、手首だとわかりやすいでしょ。ほら、見て」
ぐらいの勢いでPRの材料になってしまうことがある。

しかしこの方にはそういうのがない。
「切ると気持ちがスッとするから切ります。」
それでおしまいである。うーん、そんなもんなんかなあ・・・。そんなもんなんだなあ・・・と、不思議に思ってました。

逆に言えば薄い分、この人のいわゆるActingOutは御しやすいというか、「あ、じゃあ止めますわ」的にこれまたスッと消えてくれる。なんじゃそりゃ・・・。
まあこれが一例で、とにかく行動も言動もちょっぴり薄っぺらい雰囲気があって、それはそれでそんなに深みを追求することに精を出さないCBTという技法もあいまって、トントンと良くなってった。

しかし、この型はパンドラの箱のように、次から次にいろんな症状をお持ちで、例えばパレイドリアと言うのだろうか、壁や屋根の模様が変に飛び出してきたり、人の顔に見えたり、幻覚系の症状もあった。
これも例によって薄っぺらく、
「それが見えるとどうなります。気分が悪くなりますか?」
「いや、別に。あー、疲れてるんだなって思います」
「事実と混同したり、やたらリアルだったりしますか?」
「そんなことはないです。疲れたら見える変な模様って感じです」
みたいな様子で、やっぱりあっさりしている。

うーむむむ、と思いながら普通に治療していって、10回ぐらいのカウンセリングで不安とかがなくなり、パニックを起こすことが減り、職業的にも安定し、怒りっぽくもなくなり、趣味も見つけ、そこそこ少数の対人関係ができて、みたいな感じで大方の症状にけりがついてきたところで、突如ひらめいた。

「この人はアスペルガー障害なんだ!」

この人の素っ頓狂な感じと、時々学校なんかで目にするユニークな子供たちの像が、ある意味こーゆー大人になるという未来と、頭の中で時間軸上にバシッとつながって、疑問が氷解した。

「あー、なるほどなー、これが成人のアスペルガーというものか・・・。」

まあそんなこんなで治療を無事終了したんだけど、よくよく考えてみると本当に典型的なアスペルガーだと思えてきた。そうだと思って振り返って考えると、何で気がつかなかったんだろうと思うほど本当にそうだ。

そして、今受け持っている患者さんたちの中で、どなたが比較的定型発達で、どなたがより非定型の発達かというのも、なんとなくわかるようになってきた。定型―非定型軸というものが自分の中の物差しとしてできた感覚。

それ以後はこの物差しに引っかかったスペクトラムな方々には、若干ざっくばらんな感じでアプローチできるようになった。もともと十分ざっくばらんなカウンセリングだけど・・・。

まあ何にせよ重要なことは、アスペルガーだと元々判っていようがいまいが、ちょっと変わったその人に合わせて普通に認知行動療法をしていけば、普通に良くなる(またはならない)と言うことです。
もちろんアスペルガーと病名が付いていれば、それに合わせて治療の風味を変えることは多少あるだろうけど、アスペルガーに特別な治療とかがあるわけではなく、あくまでⅠ軸症状に焦点を合わせて、変わりやすくて変わるとおいしい所から変えてくだけと言うのは他の治療と何にも変わらない。

逆に言えば、何かよう判らん検査で、何々の項目の点数が低いとかそーゆー無駄なアセスメントをしたところで、そもそも患者さんの日常的な考えや行動を扱う技術がなければ、だからなんだよっていう感じで、あんまり意味のないことだと思う。まあ役割が違うって話かもしれませんが。
投稿者: 西川公平
2008-09-22 10:00
カテゴリー: 広汎性発達障害

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