2007/06/10: 双極性障害への認知行動療法

双極性障害への認知行動療法について。

皆さんご存知の通り、双極性障害に対しCBTはエビデンスが無い。
より遺伝的・器質的に近い疾患なのでは無いかといわれているのは、とても単純なお薬が有効なことや、その薬物への反応性が悪くないからだ。

しかし生活を不便にする症状としてのメインは「うつ」側にあるため(あるいはうつ側にある人が治療を求めてくるため)、うつ病に対する認知療法を適応したり、家族療法を適応したりして何とかやっている。
こっち側、つまりうつ側のネガティブな思考やら行動やらを調整していく事で、双極性障害そのものを制御できるようになるのかは、良くわからない。
たとえばうつ病の人が不安や焦燥や脱抑制からハイになったり過剰になったり、あるいは不安障害の人が過剰適応努力をするのは、うつ側の治療をしていて、だんだんなんとかなる事もあるけど、それと双極性のハイになるのは、ちょっと違うと思うけど・・・、微妙。

ウツは一般的「病気」イメージとかぶることが多いので、比較的自覚もされやすいのだろうが、実際のところ家族や周りの人にとって厄介なのは「躁」側だと思う。
躁に関していえば、その時自分が躁状態であるという病識が無いことが多い。
金遣いが荒くなったり、寝食を忘れて何かに熱中したり、預金を株に突っ込んだり、借金して事業をしたり、会社の規模を拡大したり、思い切ったギャンブルをしたり、浮気をしたり、とかなりイタイ。
しかし下手をすると本人はソレを「調子がいい」と呼んでいる。

とりあえずはその躁側に対する対策をするのが、最初に行われるべきだと思う。
大体は「自らのテンションのアップ&ダウン」に関する自覚をうながす方向で介入していることが多い。
こーゆーのをなんて言うのかなーって思ってたら、マッチゲームというんだそうな。識者に名前を教えてもらいました。

さて、具体的にはまずトランプを用意してもらいます。
で、こちらからテンションを10段階でモニタリングする表を渡します。
朝晩のテンションの高さを数字で本人に選んでもらう。
家族にも本人を観察してもらって同様に選んでもらう。
で、合わせると最初のうちは中々合わない。ソレをやっていくうちに、自分は客観的にどのようなテンションに見えるかという当たりがついてくる。
いずれにせよ認知できないことは対処できないので、自らが躁状態にあるという事をいち早く察知・自覚し、何らかの対処が取れればとりあえず御の字。

これやってる人で「『テンションの調整』という今まで知らなかったレバーが新たについたみたいな感じ。そんなことが自分でできるとか、しなければいけないとか思った事もなかったけど、できるようになった。これは今後もかなり便利です。」みたいなことを言ってくれた患者さんがいて、それは良かったと思う。
なんぼなんでも、躁(100)かウツ(0)かの二極で間がないって事もないんだけど、割合その間の目盛りが大ざっぱだと、適切に取れるべきコーピングも取れなくなってしまう。
でも実際のところモニターしてるだけで、調整までして来るようになるんだから、セルフヘルプって楽でいいですね。
このエントリーをはてなブックマークに追加
投稿者: 西川公平
2007-06-10 16:32
カテゴリー: 様々な困りごと

Comments

コメントはまだありません。

Add Comment

TrackBack

トラックバック

トラックバッックはありません。