2008/04/02: 強迫性障害に対する認知行動療法

最近ちょくちょく人にやり方を訊かれます。
恐怖のスキーマを同定して、それにE/RPをぶつける。


強迫性障害に対する治療と言えば、第一に認知行動療法だろうと思う。
他のあらゆる治療を置いて、認知行動療法がぶっちぎりに良く効くのは、この病気だけだと思う。
他の精神疾患、たとえばうつ病とか、パニック障害とかには、一応効くという事になっていて、確かにそれなりに効くけれど、実際のところ薬物療法と大差ない。むしろコストベネフィットからいえば圧倒的に薬物療法の方が良い。だからそれらの病気の方の場合は、まず薬物療法で十分に治療を行い、不幸にしてあまり効果が無かった時はCBTを併用してみてほしい。
しかし強迫性障害の場合は、薬物療法で様子を見る間をおかず、認知行動療法を試した方がいい。マイルドな方からシビアな方まで、基本的には認知行動療法で事足りる。

さて、強迫性障害の方への認知行動療法と言えば、その主たるアプローチは暴露反応妨害法(E/RP)になるわけですが、これは暴露法と反応妨害法からできてます。シンプルなように思えて、これが以外と奥が深いというか、結局のところ上手くいっていない治療はこの「暴露反応妨害」が成り立っていないことが多い。中途半端に暴露だけだったり、反応妨害ができていなかったり、色々ですけど、「うーん、そりゃあE/RPが成り立ってないよ・・・」という事が多いのです。
どうしてそれが成り立たないか?それはおそらくアセスメント不足だと思う。アセスメントというと知能検査とったり、MMPIとったり、Y-BOCSとったり、ロールシャッハとかもアセスメントと呼ぶのかな?でしょうけど、そういうのは保険点数取る時と論文を書く時にいるだけで、治療にはほぼ必要がない。
強迫性障害の方にE/RPをする際に必要なのは、「正に何を怖がっていて」、「いかなる手段でそれを打ち消そうとしているか」の2点だけだ。この2点がカッチリ捕まえられれば、そのまさに怖がっている事に対して暴露を行い、打ち消すことを止めさせる反応妨害をすれば、きちんと治る。
うーん、おしいなと思うのは、薄皮を剥ぐように一個ずつ治療をしていかなければいけない状態に陥ってる時で、それは多分少しピントを外している。外しているんだけど、そう遠くない所にあるので、まあちまちまと治っていくわけです。あんまり汎化はしないだろうけど。
認知療法なんかは「スキーマ」という言葉を使うけど、それを借りれば患者さんの「恐怖のスキーマ」ががっちり押さえられた上で、それに対してガツンと治療をしないと、一つの治療行為がそれほど効果的でなく、患者さんも意欲を失っていくんじゃないかと思う。
しかし、行動療法の難しいところは、治療の焦点をどこに結んでいくかについて上手に言及できていないところだと思う。あるいは、そういったことに関して語る言葉を持っていないと言ってもいい。
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投稿者: 西川公平
2008-04-02 02:18
カテゴリー: テクニック

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