2018/06/24: 第114回日本精神神経学会学術総会参加記

近所の神戸でやっていたので、物見遊山に参加してきました。その参加記などを書いてみます。
これで、参加した医学会は、WPA、行動医学会、診断学会、児童青年精神医学会に次いで、5番目の学会になります。
これまで学会は「参加するなら発表する!」のマイルールで頑張ってたけど、まあ、年経ってきたしそういうのもいいかなと思って、今回は何の発表もコメントも無しでした。

まあ、先日公認心理師に向けて面白文章を発行したのもこの精神神経学会ということで、一体精神科医の集団というのはどんなもんなんだろうなーと興味を持ったのもある。
事前にプログラムを見ても、心理士で発表しているのはごくごく僅かだった。
日程の許す限りで、一日だけの参加になったのが残念だけど、まあ、せっかく近所でやってることだし、ちょっと精神科医の集団というものを覗いてみようと思って参加しました。

まず行ってみて、参加費がめっちゃ高くて、さっそく挫けそうになった。この会場で、この人数で、なんでこんなに金取る必要があるのか、その金はどこに消えていくのか不思議やわ。
それにしても、全然知り合いがいない学会で、誰だかよくわからない人にペコペコ頭も下げなくていいし、アウェイ感というか、孤独感というか、めっちゃ気楽でした。やはり学会参加はこうでないと。

受付と所要を済ませて、まずは「内科疾患とうつ病up-to-dfate:心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、透析に焦点を当てて」に参加。以前なにかの間違いで透析の看護師さんに研修したことがあったし、知り合いの先生も演者で出てたので、興味があったのだ。
内科の先生の発表から入ったからか、皆さんきちっとしたデータに基づいて、バシッとプレゼンテーションされている。おお~カッコいい。一般診療科におけるうつのスクリーニングや治療が様々な身体疾患を持つ患者さんのQOLや精神症状に役に立つということがプレゼンされる。内科から精神科に振って、それぞれ治療するだけでは効果がない。大事なのはコラボレイティブ!みたいな大合唱だ。
指定討論の先生からは議題を出される。「コストについて考えることも大事だよ。研究ベースではコラボレイトされて立派なデータ出てるけど、実臨床ではなかなか実施が難しいようだよ」などと討論が出される。
その後の質疑で、コラボレイティブが難しい理由として、保険点数の話とか、精神科医の忙しさの話とか、アレコレ出ている。
うーん、そもそもコラボレイティブできる人は精神科医になってないんじゃないかな?という気がする。心理士にもなってないと思うけど。
要するにコラボレイティブはシステムでもあるかもしれんけど、スキルでもあるし、そのスキルは精神科医のほとんどが持ってない気がする。てか、どうやったらそういったスキルを磨くことができるのか?みたいな質問しようかと思ったけど、ちょうど時間となったので残念だった。

続いて「日本医療機能評価機構Mindsによる診療ガイドラインの精神疾患への適用」に参加する。EGUIDEについて橋本先生がご講義されている。前もって幾らかの知識はあったけれど、まあなんというか、良い取り組みだとは思う。忙しい日常臨床の合間を縫って、いろんな先生が手弁当でやっているというのはなかなかできることでない。心理で同じことができるかと言われると、まあできないな。
ちょっと思ったのは、真のアウトカムが何だ?ということで、例えば講義の理解度得点は仮のアウトカムだし、自己申告の単剤化率も仮のアウトカムだし、レセプトデータにおける単剤化率も仮のアウトカムだし、・・・。でもまあ治療者行動に対する介入だから、治療者行動の変化を見るってのは、素直に考えるとそれで良いのかもしれんけど、もやっとした。
いずれにせよ、これが精神神経学会の主たる取り組みでもおかしくないと思うんだけど、有志の取り組みにすぎず、しかも多分学会は特に応援しているわけでもないというのが笑える。

午前の最後は「依存症に対するハームリダクションアプローチ」を選択。ハームリダクションはなかなかに肝の座ったアプローチであるゆえ、聞いてみたいと思った。司会が千葉の伊豫先生で演者が久里浜の樋口先生という、政治&政治の組み合わせ。
「断酒を厳しく言えば言うほど治療が必要な人が来ない」ギャップが高まるというもっともな話があり、久里浜病院が減酒外来を始めてるんだなあと、ちょっと隔世の念を感じた。
でもその外来のアウトカムを出してないのは残念だった。多量飲酒の方の平均純アルコール度数を出せてるんだから、アウトカムも出せるだろうに・・・。まあ久里浜に何らかのアウトカムを求めること自体が間違っているのかもしれないけれど・・・。
断ギャンブルと減ギャンブルという言葉は、連続で言うと響きがちょっと気持ちいいということが判った。他にも断ネットとか断ゲームとか、ダンダン音が勇ましい感じ。いずれにせよ、精神科医が取り扱うことをあまり好まない疾患、つまり向精神薬が有効でない疾患を取り扱うのは大変なことだと思うので、樋口先生には敬意を評したいと思う。

さて、ランチョンは・・・とプログラムを見てみたけれど、医学会なのにランチョンセミナーがない。なんか税務的に色々まずいことでもあったんだろうかとか勘ぐるけれど、結局の所ランチョンがないことは世界にとって良いことなので、諦めてネットで評判の良いカレーうどんを食べに行く。
・・・まあ、ネットの評判はあてにならないってことですね。

さて、昼からはどこに行くか迷ったけれど「日本の精神医療の後進性を科学し、解決する(EBPMの視点から)」という、ちょっと挑戦的なタイトルのシンポジウムに参加する。1題目は途中からだったのでよく分からないけど、聞いたところからはクロザピンとデポ剤が治療継続性にいいよ~という話。あとはざっくり分析の自分とこのデータ。マジでざっくりやな。ピアサポートとか、なんとか色々やってくのも熱心にやってま~すというお話で、一貫したケア!みたいな話だった。
2題目は、地域ケア体制についての話。2題目の頭で、「・・・ああ、まあ、それ系の話ね・・・」と思って、席を立つかどうか迷ったけど、あと10分聞いてみようと、自分自身に反応妨害をかける。地域に責任を持たないといけないという、つまり受け入れ拒否するなみたいな話と、ゲリマンダー的なお話。国がカネを出さないなら市町村が金を出せばいい的な。ケーキ食べればいい的な。時計見たけどまだ5分しか経ってないって長いな、みたいな。でも墨田区の退院促進事業で、入院したままだと5040万かかったはずのお金が2953万に減った計算とかはちょっと面白い。金が入るところと出るところがぜんぜん違うからアレやけど。

というわけでよく我慢したと離脱して、「不安症・強迫症の治療ガイドライン」のシンポジウムにスライドする。
何と、立ち見がたくさん出ているほど人気!そんなに精神科医が不安症・強迫症について聞きたがっているとはびっくりした。これまで不安症の研修何回してても、精神科医ってほとんど来なかったけどな・・・。
途中から入ったので良くわからないけど、「不安症にベンゾ出してもいいよ~ベンゾ出すなとかいうやつは極端なやつだ。現状医療保険点数的に出してもいいって言ってるんだから出してもいいんだって」みたいな意見を、演者が恣意的に捏造したデータに基づいて言ってて、のっけからげんなりする。まあでも、げんなりする発言が出てるときに、その他げんなりしている人の顔を見るのとかが、微かに面白いことかもしれない。
千葉大の清水先生がNICEガイドラインなどを用いて、「ファーストラインはCBTですよ。我々は認知行動療法士という資格を作るつもりで動いてますよ。」的なお話をする。遠くで応援しておこう。
質疑応答は、またベンゾ使っていいですか?良いですよ的な応答があったり。なんともモニョるわー。そして懐かしの貝谷先生がアレコレ自説を述べるが、基本的に皆白けている。
見た感じ、権威というものはもはや死んでいる。つまり古い時代は終わった。でも新しい時代は来ていないので、皆不安に思っている。という感じだろうか。

その次は、ちょっと趣向を変えて、ポスターを見たり、本屋さんを覗いたりして過ごす。そんなに食指が動くポスターはなかったけれど、2,3知り合いの先生と出会って世間話とか仕事の話とかする。
あとは何に参加しようかなー?とりあえず産業カウンセリングとかやっている都合上「企業における職場と臨床現場との連携を促進するもの」というシンポジウムを聴きに行ってみる。これは更に産業医のポイントになっているらしくて、たくさんの聴衆がいる。要するに、ダブルポイントの亡者達だ。
産業メンタルヘルスについて私も研修で使うような図がたくさん出てきて、懐かしいというか、なんというか。指定討論が「守秘義務的に病名を職場に伝えるってどうなの?」「どうして対立的になっちゃうの?」「産業医どうなの?諦めるか引っ張り出すか」みたいな、結構ちゃんとディスカッションになるようなポイントを出してきて、それは良かった。答えはそんなにパッとしなかったけど。

さて、次は、せっかくICD-11にギャンブル症・ゲーム症が入ったことだし、「最新の行動嗜癖の実態と治療」に行ってみるか。1題目は聞き逃して最後の「ギャンブル依存症の方はほとんど精神科にかかっていない」「もっと専門家にかからないと」みたいな話だけ聞く。
そんなにかかっていないなら、精神科医も別に専門知識無いじゃん?とか思う。
2題目は英国のギャンブルクリニックについての報告。英国のことだからそれなりにウェイティングがあるものの、結局の所認知行動療法プラスたまに動機づけ面接を行う場合もあるとのこと。セルフモニタリングの工夫で面白かったのはトラッキングというギャンブルしなかった日は斜線、できなかった日は平行線を書いていくというやり方。他の嗜癖行動系でも使えそう。お薬の効果はどうやら怪しそう。
3題目は痴漢外来の話。まあ性加害には認知行動療法の基づいたプログラムですよと。うちもたくさん来てるから、そういう風潮あるよねと思う。痴漢してる人はうつ病が一番多いとお話されていて、「性欲が更新するのは躁であって鬱じゃないよねー」とか隣の先生と喋ってると、その先生方ってそのまま質問しちゃった。曰くアクティングアウト的に痴漢しちゃうんだそうだ。んー、そんなこともあるのかなあ・・・。
4題目はまた樋口先生で、ゲーム障害をICD-11に入れるためのロビイスト活動について解説される。なんとも政治家だなあ。
フロアからの質問で、全然空気を読まない感じの若手精神科医が、全然空気を読まずに、「ゲームしすぎを病気にするなんて、間違ってる。何でも病気にすんなや」とド直球を投げる。まあそれはそれで、確かにきちんとディスカッションしないといけないところだなと思う。
いずれにせよ、精神科医は認知行動療法はおろか、普通のカウンセリングでも怪しい感じなのに、いきなり認知行動療法を一番やれる人として治療を組み立てていけという無茶振りに、皆が戸惑い気味。
そこが多分難しいところなんだろうな。古い権威には辟易している。しかし新しい権威はエビデンスと言って、単剤化しろとかCBTファーストで、とか言ってきて自らをも駆逐しかねない。ていうか、CBTも含めて精神療法とかようできんし、ガイドラインに入れんといて。だらだらベンゾ出したいからそれでイイって言って、、、むりだよな、どうしよう。みたいな戸惑い。

1日目全体の感想としては、・・・・・ふーん。という感じ?情報が、インターネットで仕入れられるものとさほど変わらないというか、この学会のこの発表は、何のためにやってるんだろうというのが判らん。このような論文読めば分かるような話を誰のために何のためにやってるのか、ちょっとよく分からないなーって感じ。
それは別にこの学会だけじゃないかもしれんけど、この情報社会のご時世、学会って何しに来るところなんだろうという思いがあった。もちろん同窓会的に飲み会的に楽しいというのは当然あるんだろうけど。
 話をした数名の精神科医は、私を見つけると「なんで西川さんここにいるの?」と必ず嬉しそうにした。そして必ず「こんなくだらない学会に!」とか「ポイント稼ぐためだけの学会ですよ!」とか、大体の人がDisを付け加えた。
実は、これと同じ経験を一度だけしたことがあって、それは心理臨床学会に参加したときのことだ。知り合いの皆は、あたかも旅先で偶然出会ったかのように親しげに寄ってきて、ひとしきり「この学会は糞だ」みたいなことをにこやかに宣言した。
その相似性はなんだろう?精神科医と臨床心理士は実のところ血がつながっているんだろうかとも思わなくもない。同族嫌悪か。私は精神科医でも臨床心理士でもないので、良く分からないけど、たしかに行動療法士のことを好きかと言われると、それほど好きでない微妙な気持ちがあるので、まあそんなもんかもしれない。

あとは、心理学会に来てるお医者さんは割と偉そうな所もあるんだけど、医学会では当たり前だけど医者であるだけで偉そうにはできない分、みんな頭が低い?低いんだけど、何に対して低いのかというのが、なんというか、誰に遠慮してるのかよくわからない。でも、その遠慮は、少なくとも患者さんに対してではないということだけは分かる。聴衆の皆は何を求めてこの学会に参加しているんだろう・・・?と考えたところで、あ、資格更新ポイントかと思い当たった。なるほど。じゃあ、まあ、無難になるよな。
前に出た行動医学会、診断学会、児童青年精神医学会は、言ってることに賛同できるかはちょっとさておいても、なんというかある種の主張というか、こうしたいとかこう在りたいとかそういうのがあったし、WPAに至っては、精神医療を再構築していくぜ!みたいな気概がすごかった。日本精神神経学会には、そういう主張のようなものは何もない。
一つ一つの発表が悪いってわけではないんだけど、緩衝材みたいな発表というか、おがくずみたいなもんだと思う。皆もポイントのためにそれに無難にじっと耐えてやり過ごそうとしている。だから面白みを感じられないんだろう。
 でもまあ、あのキモい書面はこの聴衆たちから出たのでないことは分かったというか、学会はココでやっていないというか、きっとこの後そこかしこで、密談というか何というか、アレコレと大人の会話がなされるのだろうなと思う。

そんなことをぼんやり思いながら、でも精神科医の集まりもフツーの人というか、自分の中の偏見が減った感じがして、参加してみて良かったと思う。二度目行くとは思えないけど。
投稿者: 西川公平
2018-06-24 16:22

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