10/18: UP(統一プロトコル)2日間研修参加記 西川

滋賀医科大学で開催された2日間のUP(統一プロトコル)の研修は中々素晴らしかった。講師の国立精神神経センターCBTセンターの伊藤先生と加藤先生のお二人は、ずいぶん誠実にお仕事をされている様子で、まさに新進気鋭の心理士といった感じだった。

研修は2日間12時間にわたってエビデンスから理論から実際のワークまでバランスよく配置されており、話もこなれており、スピードもちょうどぐらいだった。
質疑応答もUPを理解したいという熱意を込めてなされており、これにも丁寧に対応がされていた。

うちのCBTセンターでは最近アウトカムについてもう少しきっちりと取って行こうとしているが、あっちのCBTセンターはRCTなんかも走らせている感じで、その辺りのシャキッとしている感はハンパなかった。
なによりプロトコルに準じるよりも、アウトカムに殉じようとされている姿勢が良かった。そこがACTの人たちと違うところかと思う。

UPは統一プロトコルというだけあって、分化した各疾患ごとのCBTモデルを各種つまみ食いしたような構成になっている。それらはモジュール単位で管理されており、各モジュールにおける意義と理念についても判りやすく説明されていた。

私自身は分化するよりさらに前のレトロCT/BTしか良く判らないので、それに基づいて以後の各分化したプロトコルを眺めている。そこからさらに統一されたプロトコルを前に、どんな感想を抱くのだろうと興味を持っていた。

UPを学ぶことは良く言えば、一通りのことをするので、使い勝手の良い各種技法を効率よく学んでいくことが出来るかもしれない。一見原疾患と関係がなさそうな身体感覚曝露も、プロトコルに従ってやってみるとそれなりに意味があるというのも、プロトコルに従うからこその発見だと思う。
そう言う意味では統一プロトコルというのは、プログラムがモジュール化されているのと同時に、心の困りごとそのものをモジュール単位で理解して対応するという、行きつく先は新たな診断体系を作り出していくような野心をも感じられた。
そういう考え方は心の病に対する認知リハプログラムなんかにも共通している気がする。認知リハは脳機能単位のモジュールだけど。

UPを学ぶこと少々困るところは、各モジュールの技法がUPで言うところの達成目標のためのツールになっており、それら技法が元々目指していた達成目標と正に同じではないという事だ。
司会の田中先生はUPを学んでいくのが基本を学ぶことだというニュアンスの事をおっしゃっていたが、レトロな私からすればそれは疑問だ。
質疑応答も、そのモジュールにおいてUPではどこを目指すか、どこを”目指していないか”について弁別するためになされていた。
それぞれの技法がどこを作用機序と考えているかについて、例えば認知療法の目指すところをUPの認知再構成では目指しておらず、行動療法の目指すところをUPの曝露では目指していない。目指していないというと大げさだが、正に同じではないというライン上にある。

このことはレトロなCT/BTからすると、ある意味致命的にも思える。

レトロ側の身びいきからすれば、そのライン上で各クライアントが同じ側に転がってくれればラインインして治るだろうし、逆側に転がれば治らないようにも思える。
しかしまあ、そこは勝手な身びいきであって、そのあたりの実際はアウトカムに準じて、私の感想とも独立しておのずと明らかになっていくことだろうと思う。

アウトカムに殉ずるという基本姿勢を学ぶことは本当に大切だと思う。
理論やプロトコルの正しさは、それを使う各個人がどれぐらいの率で改善させているかにのみ拠っているわけだから。

たとえば、私の中のレトロなBTは、強迫性障害のE/RPをする前に無駄にCTを入れることを良しとしない。
UPがモジュールの1~7でやらんとしていることは、そのCTなようにも思えるのが、気に食わない所ではある。
もちろんE/RPの後でCTを入れることはあるが、それはE/RPがターゲットとしていた反応クラスから分離して生まれた新たな反応クラスの維持管理の為であるか、E/RPとは独立して別の反応クラスの部分であるかのどちらかなのであって、いわば落ち栗ひろいのようなものである。
一方で、分化したプロトコルのいくつかは、E/RP前にCTを入れるようになっており、UPもそれに応じて入れているように見える。


料理をおいしくする下ごしらえもあれば、台無しにする下ごしらえもあるが、その辺りを経験と勘ではなく、実地に理解できるよう情報を集積していかなければならないと思う。
うちのCBTセンターでは頻度主義でやっていく研究はやれそうにないので、さしあたっては主観確率的な事前確率を出していくことにしたい。
投稿者: 西川公平
2015-10-18 08:12

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