06/21: 日本トラウマティック・ストレス学会 参加記

日本トラウマティック・ストレス学会に初めて参加して来ました。印象的だった発表者とその内容について、概要を書いてみます。

『児童期における性的トラウマ〜早期介入と長期的影響〜』
⚫︎児童期性的トラウマの支援ニーズと支援者の準備性について
亀岡智美先生(兵庫県こころのケアセンター)
・性被害のトラウマは、他のトラウマ体験よりもPTSDの生涯有病率が有意に高い。
・個々の生活場面に合わせて支援をしていくこと、保護者に治療へ参加してもらうこと、合わせてスタッフに対して啓発を徹底することが大切。
…日本におけるTF-CBTの伝道師。


⚫︎子どもの性被害と性問題行動
浅野恭子先生(大阪府中央子ども家庭センター)
・性問題行動等への治療教育を認知行動療法で進める。
・男性の性被害は、相手が男性であった時、男性性の揺らぎが著しく、混乱や不安が大きくなり重篤な影響がある。また、なかなか言語化されない。
…公的機関のこの分野にCBTをがっつり導入されていて、とても新鮮でした。福井にもあったらいいなと。


⚫︎性犯罪者の性被害
藤岡淳子先生(大阪大学大学院人間科学研究科)
・性被害体験のある性加害の成人男性受刑者を任意で集めて「訓練生」と呼び、グループを作る。CBTも使うが、「“よくなろう”という治療共同体」の中で、その関係性に重点を置いて治療を進める。安心安全にきける場を作ることが大切。
…表面的な語りではなく、実際の体験や情動を伴った語りを引き出すためにどのような配慮が必要か伺ったところ、明快に「グループに回復者を入れること」と。自助グループの構造で進めるようです。論文を拝見して視野と懐の広さを感じていましたが、さぱっとした率直さが前に出て、かつユーモアもある先生でした。このバランスが、彼らから信頼を得る所以か。




『司法場面におけるトラウマをめぐる諸問題〜虐待と性犯罪を中心に』
⚫︎子どもの虐待と司法面接
山本恒雄先生(社会福祉法人愛育研究所、性暴力救援センター・大阪)
・司法面接法のNICHDやRATACは一般的な面接と比べ、子どもから立証性のある事実情報を有意に聞き取ることができる。
・英米では子どもたちに保護局の被害調査結果を開示し、保護システムについても詳しく伝えているが、日本はそうではない。
・被虐待児もその支援に関わる者も、怒りと脅えに曝され続けて耐えられるのは味方の存在がある時。子どもにはどんな友人が何人いるか聴くといい。支援者は味方を作ろう。
…人や個人の成り立ちを人間的かつ科学的に、とても深く理解されている先生でした。決してたじろがない、半端ない肝の据わりに圧倒されました。この分野ではこういった要素が必要なんですね。山奥で熊と遭遇してもたじろがないというイメージです。直接お話すればまた違うかもしれませんが。


⚫︎性暴力被害者の法的支援とトラウマ
雪田樹理先生(女性共同法的事務所)
・「強かん神話」や偏見が、裁判所の「経験則」とされ、事実誤認が少なくない。
・司法機関内外の精神科医による専門的な診断意見や鑑定意見をも軽視、否定された事例がある。非合理な事案を集積し、学会から司法に対して意見を提示してもらいたい。
…個人の中長期的な生活まで視野に入れた、あたたかくも厳しい弁護士さんでした。


⚫︎トラウマと犯罪行動からの回復
小暮芳信さん(NPO釜ヶ崎支援機構)
幼少期からの性被害体験と、犯罪行為に至った経歴を持つ回復者。現在は、支援者。
レジメやスライドは一切ない、生の声で一本勝負。舞台映えするお姿と話しの内容に、会場の注意が一点集中し、話し終えてしばらくしても会場の拍手が止みませんでした。奢らず気取らず、実直な語りで、ご自身の内界を丁寧に振り返ってこられたのだなと思いました。
…当事者にとって、回復した先輩の存在やプロセスほどエンパワーされるものはないので、OCDの会が出している体験記やブログがないか伺ったところ、「ゆくゆくできたらいいなと考えている」とのこと。ありがたいです。




『人々にために働くということ:救援者・支援者のメンタルヘルスをめぐって』
⚫︎人名救助に関わる災害救助組織のハラスメント調査
大澤智子先生(兵庫県こころのケアセンター)
・過去に当然視された指導方法の中には、ハラスメントと認定される可能性が高い行為がある。消防士を対象にした調査で、ハラスメントを受けたことがある者は、そうでない者と比べ有意に精神健康度が低いと分かった。
・まず、研修を行い知識を持つことでハラスメントか否かの弁別スキルを磨くことが大切。管理職は組織としての対応を検討し、個人の能力に合わせた指導方法を身につけていくことが大切。
…今度、消防の管理職研修を担当するので助かりました。普段の言動を変容させる意義と効果的なその言い回しについて伺いました。論文からは実直さが伺え、直接お会いしたらとてもパワフルな方で、スーパープレゼンテーションに出てくるような先生でした。声の抑揚、身振り手振り、間、研修とはこうやるのだと学びました。今の私には、うまくできる自信がありませんが。



印象的だったのは、臨床・研究・理論構築の3本柱を並行して進めておられ、またどっしりと肝を据えた方が多かったことです。そして、回復者を招いたシンポが2つあったこと、外国から3人もの先生を招致されていたこと、全発表の冒頭にCOI(利益相反)がないと提示していたことです。
初めて参加しましたが、質の高い学びがたくさん詰まっている学会でした。明日からの臨床に活かせそうです。事務局の先生方もお疲れ様でした。ありがとうございました。
来年は仙台開催だそうです。
投稿者: 別司ちさと
2015-06-21 23:53
カテゴリー: PTSD/トラウマ

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