09/29: 参加記【第14回認知療法学会&第18回摂食障害学会】 

少し間が開いてしまいましたが,9月12日(金)~14日(日)にグランキューブ大阪にて開催された,第14回日本認知療法学会,第18回日本摂食障害学会の合同学会について振り返ります。



<1日目>

 演題発表(口頭)の2会場をハシゴしていました。
 双極スペクトラム障害における実行注意についてのアナログ研究のご発表に対して。Nの集め方と,その質について,軽躁でのスクリーニングのみで果たしてよいのか,うつの尺度を一緒にとっていないが,統制がとれているのかなど質問をしました。また,Nの質については,座長の先生からもAD/HDの人が含まれている可能性について指摘がなされていました。アナログ研究に関わっていたのは修士の頃で,だいぶ久しぶりに触れましたが,アナログ研究の困難さとそれをいかに臨床につなげていくかの課題について考えさせられました。
 続いて,滋賀CBTを学ぶ会の勉強会仲間で個人的にも親交の深い先生のご発表を聞きに行きました。スーパーヴァイズ(SV)を受けた後の介入の展開についてのご発表です。先生としては,“SVを受ける意義について”のディスカッションを期待されていたようですが,実際にフロアから出た質問は介入による結果についてばかりでちょっと残念でした。私は,SVで受けた指摘をそのまま取り入れられる先生の柔軟性について,心構えや工夫について質問をしました。
 続いて,CBTセンターの同僚の発表を聞きに会場移動。遁走を繰り返すうつ病の男性に対する認知行動療法の事例報告でした。認知再構成法をコラム法で進めるのにこだわらず,その方に合う方略(ロールプレイ)でそれを進めており,Th.とCl.の協同関係の大切さを感じました。

 さて,その後は,冬に開催予定の研修の打ち合わせをしてから,特別講演「インターネット嗜癖の現状,治療,予防」を聴きにいきました。途中からだったため,治療についてのお話からでしたが,【ネット依存はアルコール依存・薬物依存にひけをとらないほど重症度が高い】というのを初めて知りました。しかし,その一方で,アルコールや薬物とは違い,現代社会において,インターネットに全く触れないのは無理な現状があり,回復の形は様々とのこと。そのためネット依存の治療において,認知行動療法が適用となり,セルフコントロールを目指していくようです。2カ月の入院治療プログラムや,8泊9日の合宿形式の治療グループなどの紹介もあり,ネット依存治療の現状について知る貴重な機会となりました。
 
 午後も一般演題(口頭)へ向かいました。アクセプタンス&コミットメントセラピーを実践しておられる先生のご発表からは,体験的な理解を促したい一方で,言葉の議論に引き戻されそうになるTh.のリアルな苦悩を感じました。言葉の議論から,体験的な理解にシフトするために,Th.側が面接中にリマインダとして“体験”とメモとして記載しておくというのはおもしろかったです。面接では,その場のやりとりだけではなく,経過全体をメタ的に捉えておくことが大切ですが,それはとても難しいことです。

 そして,私自身の発表でした。一般演題(口頭)での発表でしたが,座長を上司が務めるというのは複雑な心境でした。
 


<2日目>

 朝は8時20分からプログラムが始まるということで,なかなかの早起きが強いられました。
 私は大会企画シンポジウム「関係性からみた認知療法:認知行動療法」に参加しましたが,「早起きしてよかった」と思えるような濃密さでした。井上和臣先生のお話の中にあった,【今こそ,私が】→【今ではなく,私ではなく】というキーワードは自分の臨床に活かしたい視点で,目から鱗でした。実際の臨床では,面接の進み方やその方によって,両者のバランスが大切なのだと思いますが,私の場合,前者が多すぎることが課題であると感じます。面接中の自分自身を俯瞰しながら,両者のバランスをとりながら,面接の主役がクライエントさんであることを常に意識できるよう,努めていきたいと思います。

 続いて,摂食障害学会のプログラムへ向かいました。「矯正施設での摂食障害」ということで,女子刑務所・医療刑務所・女子少年院といった施設の現状とそこでの治療や支援についてです。
 いろいろ感じることはあったのですが,参加させていただいて,一番ひっかかったのが,先生方が,【万引きは摂食障害の症状だ】【その点について周知をしていかなければ】と言い切っておられた点です。そうなんでしょうか?
 少なくともお話を聞かせていただいて,【万引きをする】という行動が,どんな連鎖で起こっているのか(どんな時にどんなことを考えて,どんなことを感じ,行動し,その結果どうなったか),を把握していくという話は全く出てきませんでした。
 【摂食障害】という病気のせいにして,その方がどうしてそういう行動に至っているのかの細かい分析とそこへの介入がなされていないのは,こちら側の問題ではないのかなと思うのです。
 と,その点について質問をしようと試みましたが,発言する先生方はほぼ決まっていたような会場の流れがあり,時間の都合もあり,無理でした。初めて参加する学会で,学会によってカラーが違うのだと感じました。

 午後は,合同シンポジウム「現在の精神障害に対する認知療法的アプローチ:その現在とこれから」を聴講してから,またまた摂食障害学会のプログラムへ。2日目の午後は,8会場すべてが埋まるようなプログラムの詰まり方でかなり迷いましたが,せっかくの合同学会ということで,シンポジウム「摂食障害の対応困難要因関連~臨床現場からの声~」に参加してきました。
 臨床現場として,精神科診療所から・入院治療から・心理士から・生活支援の立場から,と4人の先生方のお話がありました。ここでは同じ心理の立場でお話をされた先生に対して,お話を聞いて感じたことを書かせていただきます。
 午前の【万引きは摂食障害の症状だ】という流れに感じた違和感と同じものを感じました。【摂食障害の方々はこういう人だから難しい】【“困ってない”“治っちゃったら困る”人達が多いことも難しさの一つ】【プライドの高さが難しさの一つ】などなど・・・。
 本当にそうなんでしょうか?お話される前に,認知行動療法とは違う立場であることをおっしゃっていましたが,これらの点については,認知行動療法とか,精神分析とか,関係ないのではないかと感じました。
 このシンポジウムに参加したのは,【いつもの関わりがどううまくいかないのか】【うまくいかない時にはどんなパターンがあるのか】そんなお話が聴きたかったからですが,そういった話ではなく,【摂食障害の方にはこういう特徴があるから難しい】というのはとても残念でした。
 限られたディスカッションの時間の中で,婦人科医の先生が,「低体重による妊娠への影響,無月経のことなどをしっかりと話をすることによって,治療の乗って行く患者さんがいる」ということお話になっていました。
 先生のおっしゃることの方に納得です。【摂食障害だからどうこう】ではなくて,やせによって諦めてきたこと,できないことがあるかもしれません。低体重によって命の危険があること,無月経,妊娠出産の問題などの現実的な問題もあります。確かに摂食障害の方の抱えておられる問題には,“やりたくてやっている”ように“見える”ところが多いかもしれません。しかし,それとその方が困っているかいないかは別の問題ではないかと感じます。
 【なりたい姿,やりたいこと・・・それを達成するためにこのままの体重ではできない。ではどうすればいいか。】に自然に持っていくことがこちら側の役割ではないでしょうか。
 摂食障害といっても,症状の重さは様々だと思います。けれども,どんなに重症の方であっても,【摂食障害だからどうこう】で説明をすることは,支援者側以外得する人はいないと感じた,そんなシンポジウムでした。

 2日目の最後は,自分の発表でした。今度は摂食障害学会の方で,過食や過量服薬等の衝動制御困難な患者さんに対する介入について報告させていただきました。
 発表自体は,言ってみれば,無難に終わったのですが, 終了後に座長の先生にご意見を伺いにいきました。そこでいただいた,その方にどんな問題がどんな仕組みで起きていて,そこにどんな介入が必要なのかの説明が不十分とのご指摘には,ぐうの音も出ない,そんな状態でした。
 それなりに発表を終えれば,それなりに自己満足をするんでしょうが,それでは何も成長しないので,発表を通して研鑽を積むことは今後も行っていかなければいけないと感じました。とはいえ,そういった指摘を受けないように,まずは自分の腕を磨かないといけませんね。

 

<3日目>

 午前中はワークショップ「教育相談・児童思春期への支援における認知行動療法の活かし方」に参加し,午後は摂食障害学会のプログラムに参加しました。
 まず,一般演題(口頭)では,神経性食欲不振症で入院された患者さんへの入院治療の実際について知りました。
 私の日常臨床では,退院後のフォローとしてアノレキシアの方に関わらせていただくことが多いので,みなさんの入院中の治療の実際について知ることができたのはよかったと思います。認知療法学会のみの開催では聴くことのできない発表なので,合同学会であったことに感謝です。

 合同学会の最後に参加したのは,摂食障害学会のパネルディスカッション「当事者の観点 自助グループ活動の現状と今後の課題」です。
 今度CBTセンターにて,強迫性障害の方を対象としたピアサポートグループを開催します。そのファシリテーターを私が務めるということもあり,自助グループの実際について学びたい,そんな気持ちで参加しました。
 質問をしました。「実際に命を落としてしまう方が出た時の責任はどうなるのか」「リスク管理はどのようにされているのか」です。 
 この質問に対して,本大会の大会副会長であり,自助グループの活動を当初から支援してこられたという中村このゆ先生からご意見をいただきました。
 【治療者として関わる時には,“治す”になってしまうが,ピアサポートはそうではない。“病める時も健やかなる時も”というグループであり,そもそもスタンスが異なる。】ということでした。
 “生きていさえすればOK”
 ピアサポートの実際について学びに行ったのに,その土俵で考えるのではなく,自分の土俵で考えていました。薄い氷かもしれないですが,その上で,お互いの悩みをシェアし,支え合っておられる当事者の方々の前向きな姿と,皆さんを陰で支えてこられた中村先生のお姿に,“ピアサポートとはなんぞや”という,真髄のようなものを見たような気がしました。
 


 今回は認知療法学会と摂食障害学会の合同開催ということで,普段の学会では聴くことのできない発表やシンポジウムをたくさん聴くことができ,普段であればそこまで考えないようなことも考えることができ,よかったと思います。書き漏れているところもありそうなので,また,追記ができればと思います。

 長くなり,このブログの落とし所がわからなくなってきました。関西人ではないので,オチをつけるのがどうも苦手です(笑)。
投稿者: 栗原愛
2014-09-29 19:37

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