2014/04/25: リワークについて思うこと

巷ではリワーク(Rework)というものが流行っています。Reが再びって意味です。Workが働く。要するに、休職していた人などが、再び働き出すためのお手伝いがリワークです。

今回のネタは、リワークについてぐだぐだ書いてみます。

まあ、普通に個別の復職支援なら「CBTセンターでもクライアントさんの何割かは復職支援だ」ということなんですが、巷で流行りのリワークとは、そういう休職中の人達を一定人数集めて、集団精神療法やショートケアとかで一定時間過ごしてもらうことで、復職のステップを踏んでもらうという試みのことを指しています。

いわゆる”リワークプログラム”というのがあって、ビジネスに役立つパソコンの知識を習ったり、ビジネスマナーを学んだり、認知療法をしたり、ヨガをしたり、etc.と、カルチャーセンター+自己啓発セミナー的に良さそうなものを詰め込んでるようです。

確かに休職して家にいる状態と、復職して職場にいる状態では、刺激強度に差がありすぎるというのは実際の所あって、そういったギャップをなんとかするために、生活の中でできるリハビリや、休職中に職場に行ってするリハビリなどは取り入れることがあります。
CBTでいうところの、いわゆる段階的な目標(課題割付)ってやつです。

そうやって家庭でリハビリを構築する際に、体力づくりとか、認知・集中的なのとか、要するに独りまたは家族とできるような課題を作ることは、それなりに容易い。というか、どうしてもそうなりがち。
一方で、対人関係とか、他人を必要とするような刺激環境は、多くの人に手頃に丁度いいのがないこともあり、なかなか難しい。
たまたまその人が趣味でフットサルしてて、しばらく行ってないとか、そーゆーのあればいいけど・・・,まあ大抵はないですよ。
うーん、困った。

そんな時に、“リワークに行く”というのは、ひとつの刺激環境として重宝できなくもない。

いつぐらいだったか忘れたが結構前に、「障害者職業支援センター」という、これまで知的/身体障害の方々を中心に対応されてきた施設が、ある年からお上の方から「リワークをせよ」というムチャ振りをされてました。
ちなみに、それは現在に至っています。

初期の段階では、本当にどうしたものか困っておられた風で、たまに呼ばれて認知療法について講義したりしていましたが、最近はご無沙汰で、どうなっているか判りません。
さすがに結構経ったので、色々ノウハウがたまっていると信じたい。

これはちょっと、センシティブなので書きづらいことなんですが、そーゆーとこでのリワークというのは、本質的に”うつ病の治療とは関係がない”ことになっています。
少なくとも精神科医たちは、「素人が勝手に、訳の判らんことをしている」とプンスカしている側面があります。

ちょうどCBTセンターも「治療をしています」などと述べると、「それは医行為だ!」ということになって、えらいめんどくさいことになるのと似ています。(そんなわけでCBTセンターでなされているのは、施術ですw)

話がそれましたが、職業センターなどは医者がいないですから、そういう意味で「あくまで治療ではない」という体でないといかん事になっています。
最近はクリニックや病院などでもリワーク(という名の集団精神療法とかショートケア)をするようになってきました。
これは医師の監督の元に為されている事に名目上なっているので、治療と言っても差支えがありません。いわゆる責任の所在というやつですね。

さて、つらつら書いてきて、別にオチもないんですが、最近ちょっと思うことを書くと、医師の監督下だろうが、なかろうが、リワークというのは、やっぱりうつ病の治療でもなんでもないんじゃないかなと思っています。
うつ病というものがあり、それを理解した上でプログラムが組まれているようには、たいして思えません。
もちろん私の勉強不足もあるでしょうが。

酷いのになると、むしろリワークが復職を阻害している場合すらあります。
感覚としては、ちょうど別室登校があると、教室復帰が妨げられる感じでしょうか?

もちろんリワークに通うことが、皆悪いというわけではないのです。しかし、皆良いというわけでもないということです。

まあしかし、振り返ってみると、精神科という科は、意外とうつ病の治療とかリハビリとかに関して、そんなにノウハウがないんですね。かつての主なリハビリのノウハウは生活臨床の知見みたいな統合失調症に集まっていた気がします。

現代のようにうつ病の方がそれなりに早期に発見され、それなりに雪崩を打って医療機関に来る時代というのは、これまでありませんでしたし、投薬におけるエビデンス使用も怪しげな時代が長らく続いていたわけです。

つまり、うつ病のリワークのプログラムは、従来の精神科の分厚いノウハウの集積から来ているようなものではなく、どちらかと言えば、まだペラッペラの舶来物です。
要するに精神科のうつ病へのリハビリがまだペラペラなのだと言っても差し支えないです。

そして、認知行動療法ですよ。
うつ病のリワークプログラムには、猫も杓子も認知療法風のSomethingが用いられています。そういうファッションです。
サイゼリアにはドリアを、リワークには認知療法を。

認知療法もせこいところがあって、認知の非柔軟性がうつ症状の悪化を招くような、ややもすると認知がアカンから鬱になるんだとも捉えられなくもないような、手酷い宣伝を一方でしています。
もちろんもう一方では本当はそうじゃないんだ、と言っちゃったりしちゃう手酷さです。あ、柔軟さか。

認知の非柔軟性は、あくまでうつ病の結果であって、逆はないです。
うつ病とは認知が頑なになるということが主症状の病気です。

時々、集団CBTだけやってる人とか、EAPの人とか、企業コンサルタントみたいな人とかが、「頑張れば大丈夫、ポジティブになれる」みたいなアホなことを言っているのを耳にすると、かなりげんなりします。

それはさておき、「じゃあ、認知療法ってなんなの?意味ないの?」と思われるかもしれませんが、そこはまあ、こんな感じでとらえてます。
うつ病由来の認知の頑なさは、うつ病が良くなった後も持続しうる。
それは骨折していた時に付いた歩き方のクセが、骨がくっついてからも残っているようなものだ。
要するに、病としてのうつ病はよう治さないのですが、その時出来上がった二次障害的なエトセトラは結構あるので、そういった生活不便を何とかしてく感じ、それが認知行動療法です。

あと、気になることは、たいていのリワークでは気分障害のうち「うつ病」をターゲットにしてプログラムが組まれている風だけど、おおよそ休職復職を繰り返す人には「双極性障害」の方が中々のボリュームでいらっしゃって(後ついでに言えば社交不安障害の方も)、そういう人たちにうつ病のリワークを疑念なくやるのは結構微妙です。

そんなわけで、クライアントさんにはそこまで熱意を込めてリワークを薦められずに来ている私ですが、そんなことを言っておきながら、将来的に「気分障害の集団CBT」とか始めちゃったりなんかしたら、ゴメンナサイ。

まあ何だ、アレだ。今のリワークは、まさに試金石というか、これから伸びゆく、的な・・・ってことにしておきます。
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投稿者: 西川公平
2014-04-25 03:12
カテゴリー: うつ・躁うつ病

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