2014/04/09: 精神科外来における向精神薬投与制限が開始されます

2014年10月1日から、精神科外来では、抗不安薬、眠剤は2剤まで、抗うつ剤及び抗精神病薬は3剤までに制限され、このルールに従わない場合、診療報酬のいくつかの項目で減点となるようです。

そこからあれこれ思うことを、ぐだぐだ書いてみます。

開業の認知行動療法のカウンセリングルームにとって、薬物療法は隣の芝生なので、どうってこと無いと言えばどうってこと無いですが・・・

参考にしたのは向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究

開業カウンセリングをしていると、色々な病院、お医者さんの処方を目にする機会があります。
意外とこれはこれは病院で働く心理士よりもアドバンテージかもしれません。

それらを観て思うことは、処方のクセというのは、一度ついたら直らないもんなんだなあという事です。
きっと一時スルピリドを出すのが流行った世代がどこかにあるのだと思います。その世代の人は、ずっとスルピリド出し続けるわけです。
あんまり年代に限るかというとそうでもなくて、例えば猫も杓子もサインバルタ出す人だっているわけで。
まあ、その処方が良いと思って出してるわけですから、それで良かった記憶が残りやすく、それでダメだった記憶は曖昧になるのは人の常なので、閉じた診察室で処方が偏っていくのはある種の必然ですけれど。

趣味のように薬をONしていくお医者さんもいますが、そんなのは稀で、多剤併用をしている場合にはそれなりにお医者さんの側にも苦難の道が伺える場合があります。
もちろん稀ですが、初診から高校生に、SDA,ベゲ,SSRI,benz,とか一気出ししてるのとかも観たことありますが、それは犯罪者のたぐいですね。結局ごく軽いうつ病だったのですから。

「向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究」には、以下のようにあります。
初診時における抗うつ薬の平均投与剤数は1.2±0.5剤であった。抗うつ薬 1剤投与の患者は74.0%(n=439)[セルトラリン 26%、スルピリド 18%、パロキセチン 16%、フルボキサミン 8%]と多くを占め、抗うつ薬間の併用は 2剤併用が 23.1%(n=137)[このうち SSRI とスルピリドの併用が 94%]、3 剤併用は 0.3%(n=2)、処方なし 2.5%(n=15)であった。対象者の平均 1 日投与量は imipramine 換算で53.1±25.2mg/日であった。
初診時における抗うつ薬とベンゾジアゼピン系薬剤の併用は 73.0%(n=433)に認められた。抗不安薬や睡眠薬を使用せず、抗うつ薬のみで治療が開始された患者は 21.4%(n=127)であった。

まあ初診でSRI系は効くの遅いから、「スルピリドをonしとこう」という場合が22%位、「Benzをonしとこう」という場合が73%位あるってことですかね。

そレはさておき、クライアントさんのお薬手帳を紐解いて、どういうプロセスでどんな薬がONされたりOFFされたりの経緯を眺めるのとか、割と趣味だったりします。
かつてクリニックに勤めていた時なんかも、時間があるときは受け持ちの患者さんの薬物療法歴を紐解いて眺めてました。

まあそんな私の個人的趣味はさておき、向精神薬投与制限でしたっけ。

認知行動療法とある意味相性が良いというか、ある意味バッティングするのは「抗不安薬」です。
抗不安薬を飲む患者さんではCBTの治療成績が落ちるといったデータも有ります。
記憶や学習を扱う心理療法であるCBTが、記憶や学習を曖昧にする抗不安薬と相性悪いのは、まあ当然と言えるでしょう。
あるいは、CBTが不安を命名し、観察し、わざと膨らませ、受け入れ・・・と不安をあるものとしてその扱い方を修練していくセラピーであるのに対して、不安を消しちゃおうとする抗不安薬はむしろ真逆の存在といえるかもしれません。

あとは、私の専門の一つである不眠に対する認知行動療法ですが、結局「全然寝られない!」と述べる人に睡眠薬をガンガンONしていった所で、無駄というか、むしろ日中のQOLを下げるなどの副作用が酷いというか、ちょっとうまくない感じがします。
むしろ2錠でダメなら、3,4,5,と錠数増やしていくよりは、薬物療法以外の方法を取ったほうが全然フツーに寝られるでしょう。
なんせ本当に寝られていないわけでもないんですから、寝られてないと訴える人の「訴える症状」を寝る薬で何とか出来るわけがない。

そういや、CBTが効果を発揮しだすと、ONされてたBenzが抜けていくことが割りとあります。
要するにCBTでそれまでの自家中毒的な過緊張とかが無くなり回復してくると、ちょっとBenzが重くなってくるというか、日中眠さがきつくなってくる。それを見ていたDrがBenzを抜いて、患者さんが更にしゃきっとするという流れです。

だからまあ、2,3錠のBenz飲んでた所で、CBTする上ではどうということ無いんですが、さすがに7とか8とか飲まれていると、べへってくると言うかなんと言うか、鎮静かけるにせよも〜ちょっと無いんかい・・・と思ってしまう。
この世の中には多剤併用の方のためのお薬調整入院とかもあるらしいので、色々な所で需要と供給は成り立つもんだなあと思う。

でも結局、保険点数でしばれたとしても、処方指導が入るるわけではないので、あんまり変わらないんじゃないかな-なんて思ったりしています。
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投稿者: 西川公平
2014-04-09 00:11
カテゴリー: 雑談

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