2007/06/14: 久野語録①

ちなみにこのブログは久野先生のブログの剽窃です。http://ykuno.jugem.jp/trackback/256
専門家が専門用語を使ったブログを書いているのを、どこまで翻訳できるかやってみました。多少の意訳もあります。

*****以下翻訳*****
今日は出会いの話をします。だれしも最初の出会いは母親です。赤ん坊は親を選べないので、これは運任せです。赤ん坊にとって出産は厳密には”他動”つまりお母さんが産むのであって、”自発”つまり「赤ちゃんが産まれる」とは言えないのです。ただ、出産は母子の共同作業であることから考えれば、単なる他動とだけで捉えることが出来ない側面はあります。 

ここで久野先生のブログで何度か見たレスポンデント・オペラントについて書くと、レスポンデントとは反射行動、つまり「本人が元々持っている環境との結びつきと、それに由来した誘発された行動」のことで、例えば梅干を食べて唾液が出るのは元々の結びつきですが、梅干という言葉を聞いて唾液が出るのは誘発された行動です。それに対して、オペラントとは「人生の中で本人が選択して獲得した環境との結びつきが元となる、誘発された行動」のことで、「梅干」と言うと相手が酸っぱそうな顔をするのが面白いので、何度も梅干と言うのは誘発された行動です。

学習理論のわかりづらさがロジャースであれ、ピアジェであれ、現象学の方々であれ、数々の部外者に多くの誤解を招いていて、いまだにそうです。
サルトルという人が「絶対的自由」といったのですが、生き物は物理的にOKな範囲で生きています。だから人は空も飛べないし水中で息もできないのです。だからある個人にとっての自由とは、あくまで物理的に可能な範囲内で、なるべくたくさん選択枝があるということです。 

さて出会いは最初は”たまたまcontingency”なのですが、そのようなたまたまが重なって、さらに特定のふるまいを選んで行いやすくなります。だから出会いを生かすも殺すも、その後の「何を選んでやっていくか」がどう続き、どう発展するかに関わります。 

さて、人生には毎日いろんな出会いがあります。人や、本や、本のキャラや、モノなどに出会うなかで、やはり人との出会いはその後に大きく影響します。友人にしろ、先輩にしろ、先生にしろ、それらの”周りで本人をそそるもの”が、”本人に選ばれる意味のあるもの”になるかは学習の影響があります。
ネコに小判といいますが、ネコにとっては小判は” 選ばれる意味のあるきっかけとしては使えない”という意味です。
人間の場合でも、クラスメートが友人になるには、本人にとってそのクラスメートが”「こいつといると楽しそう」と思わせるきっかけ”になることが必要です。先輩も先生もそうです。

”その人達といると楽しいなと思わせるきっかけに”なるには、出会いから”何らか得るものがあった”経験が必要なのです。逆に、それが”やだな”と感じた時には”避ける”きっかけとなり、一緒にいたいと思わせるきっかけにはならないのです。

だから人生での人との出会いはとても重要になるのです。 会えて良かった友人の何人かは親友となり、良い体験をもたらしてくれた先生は恩師となります。 

そういったことは現実の人物だけとは限りません。それが作家でも映画の登場人物でもかまいません。若い頃に良い作家に出会うことはとても重要なことです。逆に変な本に当たり、偽者の人物に当たってしまうととてもアンラッキーです。
良い教師、良い書物との出会いは特に青年期にはとても貴重です。良い生徒、良い学生との出会いは教師や研究者の成長には不可欠の要素です。ここで言う「良い生徒・学生」とは元々「これだ!」と決まっているものではなく、むしろ手を焼かせる生徒や学生が、結果として良いきっかけと認識される事も多いのです。
もちろん優秀な学生からも数多く学びますが、それ以上に「落ちこぼれ候補」とレッテルを貼られそうな生徒・学生からは学ぶ事が多かったと思います。おそらく私自身が落ちこぼれだったからでしょう。

数々の出会いの中で私を育ててくれた最大のものは難渋したクライエントの方々でした。私は3ヶ月で治療できない場合は治療者失格だといつも吹聴していますが、中には5年がかりで何とか社会復帰まで支えたというクライエントさんもおられます。最大・最長は10年がかりです。
自分の技が及ばないクライエントは適切なところを紹介しているのですが、半年もたたないうちに舞い戻ってこられるのです。人間には不可能な事があるのだと自分を慰めているのですが、クライエントさんにもご家族にも迷惑をかけて申し訳ない気持ちで一杯です。
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投稿者: 西川公平
2007-06-14 16:24
カテゴリー: 久野語録

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