2007/06/14: アスペルガー障害と認知行動療法①

大人のアスペルガー障害(推定)の方に、あれこれ試してみる

多分アスペルガーじゃないかなーという人に、どのようにアプローチするかは以前も書いたとおりCBTをしていくという事なんだけど、この前東京認知行動療法研究所で症例報告したケースについて、どんな事をしたか記述してみる。

1、問題の同定
ここがうまく共通認識(CBTで言うところの共同経験主義)に至るかどうか、結構難しい。上手に問題の全体像を把握できるかどうかは、真摯に聞き込んでいくしかない。しかし障害特性として、問題の全体像を伝えるために順序立てて言葉を選ぶことが苦手だったり、抽象化された事と具体的な事の区別がうまくつかなくて、実際何に困っているのかわからなかったりする。
それでも後々になってから、あっと驚かされる大きなカテゴリが登場するなんて事がしばしば。

2、危機レベルの算定
上と一緒だけど、たまたま自傷行為があったり、会社を首になりかけてたり、まずい事があるのならそれがどれぐらい緊急性を要するのかをある程度推量しておく必要がある。ライフラインについてそれが重要だと分かっている人もいれば、そうでない人もいるので、定められた質問フォーマットがあると楽かもしれない。

3、当面の目標
問題山積の中で、とりあえず何に取り組んでいくと良いのかを、本人とカウンセラーの相談で決めていく。

と、ここまで書いてきたけど、ごく一般的な話に思えてきた。普通それ以外の進み方って考えられない。
たぶんどのあたりをまず取り組むのかというポイントの選定で治療者のクセが出るとは思います。
人格障害系の人でもそうだけど、Ⅱ軸な方々とカウンセリングをしていると、何と言うか山積な問題に「誘われる」事が多い。矢継ぎ早に「どう、ここ変でしょ?ひとつ取り組んでみない?」と、言われてるわけでは無いんだけど、そんな感じ。その誘惑には耐えて、構造をもって当たるのがいいんじゃないかなと思う。

そのあとその方の場合は
・「極端に揺れ動く激しい怒りの情動とそれに付随した認知の中和」
みたいな感じでやっていき、それが一段落した所で、今度は
・「現在の職場における社会技能訓練」
に移り、それが一段楽した所で、最後は
・「コミュニケーション・恋愛・性の相談」
に移った。で、終了。

ケース報告を聴いていた人からの感想では「あつかう問題が徐々にリアルで身近な事に移行し、過去の事から現在の事、そして未来の事に移行していってる」みたいなコメントをもらったが、そう言われればそうだと思う。
ずいぶん前のケースなので残念な事にカウンセリング中にそこまで考えていたわけでは無いが、まあ結果的にそうなっている。カウンセリングが進んでいるときって、たいていそうだけどね。
とりあえず落ち着かないと生活の改善も何も無いだろうから、最初は安定するように働きかけて、あとはちょっとした生活の工夫が加わった、ぐらいのもんですけどね。

最終的に終わった後でも独特のユニークさは保たれたままで、まあそのあたりはキャラとして生きていってもらえば良いんじゃないかなと思った。
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投稿者: 西川公平
2007-06-14 16:19
カテゴリー: 広汎性発達障害

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