2011/02/25: うつは“心”から治せるか  注目される認知行動療法

少し遅れた感じですが、先日のNHKの放送をようやく見ることができました。
盟友の小堀先生が出演されていて、どこで小ネタを差し挟むのかハラハラしました。

「NHKクローズアップ現代 うつは“心”から治せるか」から動画が見られるようです。

見逃した人はぜひ。

小堀さんのカウンセリングに出てきた、「計算する」というのは確かによくやることです。
私は相手の記憶から計算するという事は惑いが出るので、あくまでモニタリングのデータから確率をはじくことが多いです。

ただ、もう一人のうつ患者さん役の人のナレーションはおかしい。
「自分は不幸だという考えが出現」⇒「抗うつ薬が処方される」⇒「余計におかしくなる」という流れで説明がされていますが、処方箋の袋には頓服薬と書かれています。
抗うつ薬が頓服で処方される事はまずないので、おそらく抗不安薬(ベンゾジアゼピンか何か)が出てたんだろうと思う。
そしてそれらの抗不安薬には抗うつ作用がほとんどないので、診断の間違いか、処方の間違いか、ナレーションの間違いか、どこかおかしいと思う。

そして、髙橋チカ子さんというカウンセラーのやっていたことは、どちらかと言えば精神分析であって、認知療法ではない。
かつての父子関係に対する気づき云々といった「洞察を中心とする技法」を、認知療法でも絶対用いないわけではないが、ほとんど使わない。

そういった「本当は精神分析なんだけど認知療法モドキをする」事に対して、良く言えば幅広く受け入れる懐の深さ、悪く言えばいい加減さが認知療法にはあるなあと思う。
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投稿者: 西川公平
2011-02-25 03:25
カテゴリー: うつ・躁うつ病

Comments

こぼり on 2011/03/02 2011-03-02 20:38

いやーChelseaというサッカーチームのマグカップをおいておいたり、パソコンの壁紙にもChelseaの写真を使っていたのですが、それほど映りませんでしたね。

後半の事例は、小堺プロデューサーの意向が反映されていたと思います。彼は「養育体験」について取り上げたかったらしく、僕にも養育体験について話し合ってほしい、ということをディレクターを通して依頼してきました。全く取り扱いませんでしたけどね。

gestaltgeseltz on 2011/03/06 2011-03-06 10:00

>こぼりさん
なるほど。そういうカラクリだったんですね・・・。”小ボケの小堀”面目躍如ですね。

なんで認知療法に養育体験??とか思ってたら、素人プロデューサーが自分の思い込みでセラピーのありようを捻じ曲げて放映してたんですねえ。困ったもんですね。

しかし、養育体験云々ってのはいかにも素人的な発想というか、そりゃ誰しも影響があるだろうけど、治療に使えることがあまりないですからねえ。

髙橋チカ子さんは、NHK御用役者としてきちんと役割を果たしたというところでしょうか。

ただ全く取り扱わない分、残念なことに小堀さんの時間が短かったのではないかと思います。
真実って伝わらないものですね。

こぼり on 2011/03/06 2011-03-06 19:32

身体症状の訴えから始まり、自分は仕事ができておらず上司に迷惑をかけているという思考にたどり着くまでの、困りごとを噛み砕いていく過程が、自分的には面白かったんですけどね。

放送では、たどり着いた「回答」がいきなり出ちゃいましたね。料理番組を見ようとしたら、調理する場面がなくて、オーブンから取り出した料理をゲストが頂くみたいな。

高橋チカ子さんは、かれこれ8年近くの知人ですが、あの場面だけ取り上げられて、ご本人もびっくりされていたと思います。

スタジオでも国仲さんが「養育体験を扱うことが多いんですか?」という質問をしていましたが、大野先生は「養育体験もそうですが、生きるなかで身につけたことや、最近起こったことも・・・」とニュートラルに解説していましたよ。

gestaltgeseltz on 2011/03/08 2011-03-08 15:01

>こぼりさん
結局のところ認知行動療法の普及という我々にとって大事な事柄を、赤の他人であるNHKなんかに頼っていてはいかんという事かもしれませんね。

cahngshang on 2011/07/17 2011-07-17 18:30

このムービー、あれよあれよとうつ病が治っていく描写がなんか成功法則の本でも読んでいる感じですね。

gestaltgeseltz on 2011/07/20 2011-07-20 10:54

>cahngshangさん
治る時はあんなもんだと思うのですが、養育体験云々は治療にそれほど必要ないというか、むしろどちらかといえば邪魔な・・・

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